文:馬場 かれん 写真:松田 珠実
 
 今回は、公認会計士短答式試験と日商簿記1級に合格された経営情報学部4回生の栗田さやかさんにインタビューをさせていただきました。

担当教員注:学年等は投稿時(2024年3月)のものです。

学外推薦講座制度を利用して予備校で勉強

——:公認会計士短答式試験と日商簿記検定1級の合格、おめでとうございます!
栗田:ありがとうございます!
——:まずは公認会計士短答式試験についてお尋ねします。
公認会計士とはどのような資格ですか?
栗田:業務として上場企業等の財務諸表の会計監査ができる唯一の資格です。
 
ゼミ指導教員注:上場企業以外に、私立学校振興助成法に定める補助金を受ける学校法人は公認会計士又は監査法人の監査を受けることが義務付けられています。なお非上場企業・組織の会計監査は、会計士の資格をもたない監査役でも担当できます。
——:税理士との違いは何ですか?
栗田:会計監査は公認会計士しかできない業務独占になっています。また公認会計士名簿に登録すれば、公認会計士は税理士の仕事もすることができます。
 
ライター注:業務独占とは、その資格を持った人しか行うことが許されていない業務のことを指します。例えば、医師しか医療業務を行ってはなりません。また弁護士であれば、交通事故での相手方保険会社との交渉、離婚時のトラブルが発生した場合の相手方との交渉、裁判書類の作成、法律相談業務、民事裁判の代理人になること、刑事事件の弁護人になることなどが該当します。
 ——:公認会計士試験と公認会計士短答式試験の関係を教えて下さい。
栗田:短答式試験は公認会計士試験の一次試験になります。それに受かると、二次試験の論文式試験を受けることができます。
——:公認会計士の合格率はどのくらいですか?
栗田:年度によって異なるのですが、短答式試験の合格率は平均して上位10%といわれています。論文式試験は40%くらいが合格するみたいです。
——:公認会計士試験への挑戦を決めたのはいつ頃ですか?
栗田:1回生の夏です。
——:公認会計士短答式試験を受験されようと思ったきっかけを教えてください。
栗田:大学の「簿記・会計学入門」を受けたときに会計学を知り、何か資格を取得したいと思っていたので、それに通ずる公認会計士を受験しようと思いました。
——:短答式試験の科目を教えてください。
栗田:財務会計論・管理会計論・監査論・企業法です。
——:試験形式を教えてください。
栗田:マークシート方式による択一式試験です。
——:短答式の受験回数と受験時期を教えてください。
栗田:2回受験しました。1度目は2回生のときですがボロボロで(笑)。そこで一度諦めたのですが、再度勉強し直して去年の12月に受験し、合格しました。
——:そうだったのですね…!
短答式試験の合否判定の基準を教えてください。
栗田:公認会計士・監査審査会は得点率70%を合格基準にしているそうですが、実際には試験の難易度に合わせて変更しているそうです。私が受けたときは合格ラインの得点率が75%と過去一高かったみたいです。
 
ライター注:公認会計士・監査審査会は、公認会計士法に基づき、合議制の機関として金融庁に置かれている。当審査会の業務は、⑴「品質管理レビュー」に対する審査及び検査、⑵公認会計士試験の実施、⑶公認会計士等に対する懲戒処分等の調査審議を行っている。
出典:公認会計士・監査審査会/審査会について/組織の概要
 ——:試験時間を教えてください。
栗田:財務会計論のみ2時間で、その他(管理会計論・監査論・企業法)は1時間です。
——:1日で全ての科目が実施されると疲労が溜まると思うのですが、集中力を保つためにしていたことはありましたか?
栗田:科目の間に1時間休憩があるので少し仮眠をとったりしていましたが、あとは気合いです(笑)。
——:なるほど(笑)。
阪南大学が指定する、公認会計士の学外推薦講座は受講されましたか?
栗田:受講しました。
 
ライター注:阪南大学には本学が指定する専門学校を特別割引(本学学生に限る)で学べる学外推薦講座があります。
 ——:学外推薦講座を受講した理由を教えてください。
栗田:公認会計士の資格を独学で勉強するのは絶対無理だと思っていたので、専門のところで勉強しようと思ったからです。
——:受講してよかった点を教えてください。
栗田:先生へタイムリーに質問できたところや、定期的なテストをしてくれることで実力アップにつながったところもよかったです。
——:予備校に通う上で、周りの受講者への気おくれなどはありましたか?
栗田:周りは名門大学の方もいたので正直少しだけありました。ただ会計士試験を学ぶ上でのスタートラインは同じなので、あまり意識せず取り組んでいました。
——:科目数も多いですが対策はどのように行っていましたか?
栗田:優先順位を決めて、出題頻度の高い問題から勉強していました。
——:論文式試験を受験するご予定はありますか?
栗田:今年の8月に受験する予定です。

毎日13時間勉強

——:続いて日商簿記検定1級についてお尋ねします。
日商簿記検定1級の試験内容を教えてください。
栗田:商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の4科目からなる検定資格です。
 
ライター注:日商簿記1級は、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベルです。合格すると税理士試験の受験資格が得られます。
出典:簿記 1級 | 商工会議所の検定試験 
——:日商簿記1級取得者は主にどのような仕事をされているのですか?
栗田:経理関係の仕事に就かれる方が多いそうです。
——:日商簿記検定1級への挑戦を決めたのはいつ頃ですか?
栗田:ちょうど1年前です。
——:日商簿記検定1級も合格率10%前後と難関資格ですが、取得しようと思った理由を教えてください。
栗田:会計士試験の実力確認のような感じで受験しました。
——:公認会計士試験と日商簿記検定の試験内容は似ているのですか?
栗田:はい。というより、範囲がダダ被りなので簿記1級は公認会計士の勉強にもなっていました。
——:公認会計士試験の受験を目指している人で、簿記1級も受験する人は多いのですか?
栗田:私含め公認会計士を目指している人は、ペースメーカーの役割として簿記1級も受験する人も多いと思います。
——:日商簿記検定では筆記試験とネット試験がありますが、どちらの形式で受験されましたか?
栗田:筆記試験で受験しました。
——:受験時期を教えてください。
栗田:去年の6月です。
——:合否判定の基準を教えてください。
栗田:得点率70%(70点)以上が合格といわれていますが、1級も公認会計士同様、相対的に判断されて、合格率が10%になるようにしているみたいです。私も受験したときの自己採点は68点だったので少しひやひやしました(笑)。
——:本当ですね…!
試験時間を教えてください。
栗田:商業簿記・会計学で90分、工業簿記・原価計算で90分です。
——:こちらは半日で全ての科目をし、休憩も15分しかありませんが、集中力を保つために心掛けていたことはありましたか?
栗田:これも気合いですね(笑)。前の試験が終わったらすぐ切り替えていました。
——:何度目の受験で合格されましたか?
栗田:1回目です。
——:私自身も簿記の授業を受けた経験があり、常に素早く正しい計算を求められた印象があるのですが、勉強はどのように行っていましたか?
栗田:アウトプットメインで勉強しつつ、都度教科書に戻って今どの処理をしているかや、計算方法などを振り返っていました。またミスしたところは赤字で大きく目立たせるなど工夫していました。
——:日商簿記検定には3級や2級もありますが、それらも取得されましたか?
栗田: はい。どっちも取得しました。
——:3級や2級はいつ頃合格されましたか?
栗田:どちらも1回生のときに取得しました。
——:同時受験をされたのですか?
栗田:はい、午前に3級、午後に2級といった感じです。3級は12月に合格したのですが2級には落ちてしまって、2級は次の2月に受けて合格しました。
——:日商簿記検定2級と1級の違いは何ですか?
栗田:難易度はやっぱり全然違いますね。1級では会計学に含まれる理論科目で記述式がでてくるのも違うポイントです。
——:普段はどこで勉強していますか?
栗田:通っている予備校の自習室です。
——:公認会計士短答式試験と日商簿記検定1級を受けるにあたり、1日の勉強時間を教えてください。
栗田:普段は10時間くらい勉強していて、論文式試験も迫る今では13時間ほど勉強しています。
——:13時間ですか!?それはすごいですね…!
どのように勉強時間を確保していますか?
栗田:今は春休み期間なので、朝からずっと自習室にこもって勉強しています。
——:長期間勉強するにあたり、モチベーションを保つためにしていることはありますか?
栗田:週に1度は休みを確保することです。また勉強の集中力が切れたときは、あらかじめ決めておいたタスクを死に物狂いで終わらせて、はやく帰ることを心掛けています(笑)。
——:勉強が手につかないときなどはありますか?
栗田:短答式試験が終わったときはまさにそうで、3日間くらいはまったく勉強ができませんでした。だから今はそのつけを払うために13時間勉強しています(笑)。

高校時代は国体で3位入賞 部活の苦しさと比べたら勉強はぜんぜんマシ

——:続いて栗田さん自身についてお尋ねします。
出身高校を教えてください。
栗田:愛媛県の聖カタリナ学園高等学校です。
——:高校では部活動などには所属していましたか?
栗田:3年間ソフトボール部でピッチャーをしていました。高校もスポーツ推薦で入学して、国体では3位入賞したりと、かなり打ち込んでいました。
——:それはすごいですね!
部活動をしていた経験から、資格取得を目指す上で活かされていることはありますか?
栗田:長い日は9時から21時まで練習したりすることもあったので、体力面はだいぶ活かされていると思います。部活の苦しさと比べたら勉強はぜんぜんマシなので(笑)。
——:大学の入試区分を教えてください。
栗田:指定校推薦です。
——:阪南大学や経営情報学部を志願された理由を教えてください。
栗田:経営関係を学びたいと思っていたところ、高校の先生に勧められたことがきっかけです。
——:資格を取得するのに役立った大学の授業科目はありますか?
栗田:「簿記・会計学入門」や中條先生の「情報会計論」です。
——:会計・金融系科目以外で履修してよかったと思う科目はありますか?
栗田:「マスメディア論」は、より事実を伝えるためにはどのようにメディアを使えばいいかなどを、実際に起きた戦争と交えて学べたのでとても面白かったです。
——:所属ゼミを教えてください。
栗田:中條ゼミです。
——:ゼミではどのようなことを勉強していましたか?
栗田:FPなど、お金に関することをメインに勉強していました。
——:中條ゼミに所属してよかったことを教えてください。
栗田:勉強している会計士試験に役立つような知識を教えていただけたことです。
——:卒論のタイトルを教えてください。
栗田:「会計の歴史と変遷について」です。
——:卒論の内容を教えてください。
栗田:ぜんぶ会計のことです(笑)。
——:そうですよね(笑)。
栗田:はい(笑)。簿記の歴史から始まり、今の会計基準、会計士の仕事などを書きました。
——:今後の目標を教えてください。
栗田:論文式試験に合格して公認会計士になることです。
——:これから難関資格取得を目指す後輩にアドバイスをお願いします。
栗田:「死に物狂いで勉強しろ!」です(笑)。ちょっと言い過ぎかもですが、時間も趣味も犠牲にして、正しい勉強法で勉強することが資格取得につながるんじゃないかなと思います。

取材を終えて

 同じ4回生として将来のために努力されている栗田さんを最後に取材できて、4月から新社会人として頑張ろうとより思えました。論文式試験に合格できるよう、陰ながら応援しています。この度はお忙しい中取材に応じてくださりありがとうございました。
馬場 かれん


 公認会計士短答式試験と日商簿記検定1級の合格おめでとうございます。始終表情豊かで素敵な写真を撮ることが出来ました。取材前や後も明るくお話してくださり、栗田さんの人柄が伝わってきました。私は4月から社会人でこれが最後の取材だったため、貴重なお話をたくさん聞くことができて良かったです。最後に、お忙しい中お時間を作っていただきありがとうございました。
松田 珠実

ゼミ指導教員コメント

 栗田さん、公認会計士短答式試験合格おめでとう!栗田さんのすばらしい点は、まずその行動力だと思います。13時間の勉強時間をこなせるのも、「それが必要だから」、やらない理屈を考えるような人ではないのです。いったん目標を決めたら迷わないという行動原理は、一見単純ですが決して誰にでもできることではありません。私は栗田さんのそういうところを尊敬しています。プレッシャーをかけたくないので、私から試験の話はしません。ひたすら自分の信じる道を歩んでもらいたいと思います。
中條 良美

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阪南大学経営情報学部 学生広報誌「じぇむ」