Z世代の旅行動機を喚起する情報発信のあり方について提案しました

 2023年度は、国際観光学部1~4年生の学生有志8名が北海道標津町プロジェクトに参加しています。彼らは、昨年10月に実施した現地調査で得た情報をもとに、放課後や休日に集まり、現地での発表に向けて議論を重ねてきました。そして、2月に標津町を再訪し、「Z世代に向けた旅行動機を喚起する情報発信のあり方の検討」と題する成果報告を行いました。
 成果報告の内容については、以下の学生の報告で詳しい説明がありますが、今回はSNSでの情報収集や画像の保存、旅行先の選択など、自分たちが普段何気なく行っている行動を言語化し、その理由を考えるという点でとても苦労していました。とても大変で、時間のかかる作業であったため、春休み期間中も大学で資料作成を続けたほか、発表前日も夜遅くまで練習し、SNSをあまり利用しない方々にも伝わるよう、説明を工夫していました。こうした「考える」作業は大変でしたが、この論理的思考こそ大学の学びです。当日の成果報告会には平日にもかかわらず、30名近くの町民が来てくださいましたが、たくさんの質問や激励をいただき、彼らの努力の甲斐もあったと思います。
 今回は北海道根室振興局が実施する「インカレねむろ大学等研究プロジェクト」の支援により実施できました。また、昨年の現地調査だけでなく、今回の成果報告会の開催にあたり、標津町役場の齋藤学さまをはじめ、現地の方々に多大なるご協力を賜りました。学生の学びと成長の機会を与えてくださいましたことに心より御礼申し上げます。(森重昌之)

当日の成果発表と活動の様子

  • 成果報告会の様子

  • 成果報告会の様子

  • 成果報告会の様子

  • 現地の漁師さんとの交流の様子

  • 野付半島で流氷と知床半島を眺める学生

  • 流氷が訪れた野付半島で記念撮影

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参加した学生の報告

伝えることの難しさを感じた報告会
 国際観光学部1年 真室美空

 2月22日、標津町生涯学習センター「あすぱる」にて、前回の現地調査の成果報告会を行いました。前回は昨年10月に3日間訪れましたが、今回は現地調査で集めた標津町の魅力や課題、さらにいくつかの提案内容を発表させていただきました。今回は「Z世代に向けた旅行動機を喚起する情報発信のあり方の検討」について発表しました。
 昨年の現地調査から帰阪後、SNSの利用率と旅行動機に関するデータを集めたり、SNSに載せられた写真や動画を分析したりして、Z世代が旅行先を選ぶ際にどのようにSNSを活用しているのかを考えました。メンバー間での話し合いの結果、SNSで写真や動画を見て、その後に取る行動に男女差があることに気が付きました。男性は投稿を見た後、その場所や営業時間、料金などを調べるために公式サイトに行くことが多いのに対し、女性はその投稿そのものの信憑性を確かめるためにTikTokやInstagramなど、個人が発信する情報を集めることが多いということがわかりました。
 この男女の違いからSNSでの情報収集の方法を3パターンに分け、それぞれに合うように情報を届けるために、今後標津町がどのように発信していくべきかを提案させていただきました。1つ目は、「何気なくSNSを見ている時に気になった場所を保存する」パターンです。このパターンの大きな特徴は、まだ旅行に行くことを決めてない点です。2つ目は、「旅行に行きたいと思い、ホームページなどでメインの行き先を決める」パターンです。1つ目との違いは、旅行に行くことを前提としているということです。3つ目は、「特定の趣味を持っている」パターンです。
 私はパターン1の発表を担当しました。はじめに、時代によってSNSの流行の写真が移り変わっていることを説明しました。2017年頃は壁に描かれた羽のように、人工的に装飾された物の前で撮影することが「映え」でしたが、2019年頃には立体で奥行き感のあるフォトスポットで撮影することが流行りとなりました。さらに、コロナ禍を経た現在は、奥行き感のある背景を自分で探し出して撮影することで、より日常的なものに「映え」が変化しました。私たちが現地調査で撮影した写真の中にも奥行きのある場所に人や物が写っている写真が多く見られました。
 次に、SNSで興味を持たれる投稿の傾向を考えました。プロカメラマンが撮ったような景色や動物の写真はあまりも綺麗で、自分で撮るには少しハードルが高いと感じてしまいます。しかし、スマートフォンのカメラで撮ったような、人物が写り込んでいる写真であれば、旅行に行った際のイメージが湧きやすいのではないかと考えました。このことから、次の2つの提案をさせていただきました。1つ目は「足元ステッカー」と「スマートフォンフォルダー」です。これらを設置することで、SNSを見て興味を持った投稿のように、簡単に同じ画角から撮影することができます。2つ目は「Instagramのストーリー機能の活用」です。標津町の観光資源の一つでもある朝日や夕日などの美しい自然をアピールするために、その日の気候や日の出・日の入り時間、流氷情報などをInstagramのストーリーで発信することで、今日はこの時間に行けば朝日や夕日を見ることができると思い、標津町に足を運んでもらう動機につながります。
 ここまでは主に写真を利用した提案でしたが、動画についても考えてみました。私たちが着目したのは、数分間の長い動画ではなく、数十秒で手軽に視聴できる「リール動画」です。リール動画の特徴は風景や臨場感を得られたり、音声や音楽を取り入れたりすることでより魅力を伝えることができる点です。標津町の広大な自然は写真だけでは伝わりにくい部分もあるため、動画を活用した発信も取り入れていくべきだと考えました。
 まとめとして、パターン1のような人はSNSを見ている時点ではまだ旅行に行く予定ではないため、いつか旅行に行く時のために気になった投稿などを保存します。保存して後から見返してもらうためには、インパクトのある写真や動画で目につきやすくすることがポイントとなります。
 今回発表する上で私たちが意識したことは、まずSNSの利用についてメンバーの感覚・価値観をお伝えし、それもと基にパターン別に分けて提案することです。毎日のように利用しているSNSを改めて言語化し、標津町の皆さんに理解していただくようにするとなると行き詰まることが多く、何度も議論を繰り返し整理してきました。前日の練習では発表内容がまとまっておらず、夜遅くまでメンバー全員で最終確認し、当日もとても緊張しながら発表しました。しかし、多くの標津町の方々が私たちの発表を聞きに来てくださり、最後の質疑応答でも想像より多くの感想や質問をいただき、それらを通して私たち自身もより理解が深まったと感じました。昨年の現地調査を含め、今回の成果報告会は標津町の皆さんのご協力があってこその成功だと思います。改めて感謝を申し上げます。
 私がこのプロジェクトに参加するのは、今回が初めてでした。最初はわからないことが多く、不安や緊張もありましたが、大学生活で何かに挑戦したいという目標があったので、このプロジェクトに参加させていただきました。プロジェクトを通して先生や先輩だけでなく、大学の枠を超えて数多くの方とのつながりができ、充実した時間を過ごすことができました。今回の学びを今後も標津町だけでなく、身近な地域にも活かしていきたいと思います。

現地での発表で感じたSNS活用の難しさ
 国際観光学部3年 高梨優七

 私たちは2月22日に、北海道標津町で「Z世代に向けた旅行動機を喚起する情報発信のあり方の検討」について、標津町の皆さまに向けて成果報告を行いました。今回の成果報告では、Z世代がどのようにSNSを利用して旅行情報を得ているか、Z世代が良い反応を示すSNSの投稿とはどのようなものかを、自分たちで分析しました。そして、これらをもとに前回の現地調査で調査した標津町の観光資源を生かした、Z世代への情報発信のあり方について提案させていただきました。
 自分たちの情報収集の違いと旅行に行くまでの行動の違いを3パターンに分け、それらの行動パターンに合わせたSNSの情報発信について考えました。パターン1は、何気なくSNSを見ていて、気になった写真や場所を保存している人です。旅行に行く際はこの保存した写真の中から旅行先を決定します。基本的にインスタグラムなどのSNSで情報を集めており、さまざまな人びとの投稿を見て写真を加工しすぎていないかなど、投稿の信ぴょう性を確認します。インパクトのある写真やきれいで映える写真に惹かれる傾向があるため、標津町で奥行きがあり、情緒が伝わりやすい、流行写真が撮影できそうな場所を選びました。また、足元ステッカーやスマートフォンフォルダーを置くことで、誰でも同じ画角で映える写真が撮影できると考えました。
 パターン2は、すでに旅行に行くことを決めており、SNSで旅行先を選択している人です。SNSだけでなく、グーグルマップやホームページで見た観光地や周辺の情報を調べています。どれだけ多くの周辺情報を得ることができるかが重要であるため、グーグルマップの評価や口コミがきっかけにつながると考えました。また、標津町には「けさのさけ」というウェブサイトがあり、町内の複数の情報を簡単に収集できます。このサイトにたどり着くために、インスタグラムのメンション付き投稿を促し、多くの人の目に触れるようにすること、プロアカウントを活用し、フォロワーの情報を収集することで、傾向に合わせた投稿ができると考えました。
 パターン3は、SNSで趣味に関する投稿を見ている人です。公式サイトで情報をチェックし、イベントの有無などを確認するために、何度も同じサイトにアクセスし、情報の更新があるかチェックしています。「けさのさけ」に掲載されていなかった、川北温泉や根室標津駅転車台を観光スポットとして追加することで、新しい旅行動機のきっかけになると考えました。他の情報サイトや特定のものに特化したサイトにも歴史や特徴を掲載することで、多くの人に知ってもらうきっかけになります。
 今回の成果報告会では、たくさんの標津町の方々にお越しいただき、たくさんご質問や好評のお言葉をいただき嬉しく思いました。一方で、ご年配の方やSNSを普段利用されない方にはわかりにくい内容であったなと感じました。私たちはSNSを普段から利用しており、SNSを利用することが日常の一部になっています。そのため、「タグ付け」や「バズる」、「リール動画」などのSNSの用語は自然と覚えていましたが、その言葉を利用しながら理解していたため、用語の説明をしようとすると、うまく説明できないことが多くありました。SNSの用語をひとつずつ説明しながら、SNSで情報発信することの重要性を伝えることの難しさを感じました。今回のプロジェクトでは、現地調査から成果報告会まで、とても貴重な経験をさせていただきました。今後の大学生活にも活かしていきたいと思います。
 最後に、今回のプロジェクトにご協力いただいた標津町の皆さまに心より感謝申し上げます。

標津町の魅力を最大限に伝えるためには
 国際観光学部3年 原菜摘

 2月22日(木)、北海道標津町の生涯学習センター「あすぱる」の町民活動室にて、研究成果報告会を行いました。
 今回のプロジェクトでは「Z世代に向けた旅行動機を喚起する情報発信のあり方の検討」をテーマに研究を進めました。私たちと同世代の旅行を検討している人びとがどのように情報を収集し、旅行先を決定しているのか、そのしくみを明らかにすることで効果的な情報発信の方法を熟考してきました。そして、報告会では標津町の特性に合わせた情報発信の方法を提案させていただきました。
 昨年10月に実施した現地調査では、標津町を紹介する動画を作成することを目的にいくつかの観光スポットや施設などを実際に周り、素材になりそうな写真や短い動画を集めました。この現地調査をもとに、旅行者が個々に必要とする旅行情報や情報収集の方法について話し合いを重ねました。その結果、以下のことがわかりました。
 私たちの実体験や複数のデータから、Z世代はSNSによって旅行動機が喚起されることが多いことがわかりました。また、旅行動機が喚起されるきっかけは一様ではなく、いくつかのパターンが存在しており、「インパクトの強い画像や動画」、「観光対象の周辺情報へのアクセス性」、「趣味の世界におけるストーリー性」などに分類できると考えました。そこで、こうした条件に合わせた情報発信が必要ではないかと考えました。この気づきからパターン別に観光地側はどのような情報を提供していくべきなのか熟考しました。
 まず、「インパクトの強い画像や動画」によって旅行動機が喚起される人に向けては、「写真映え」かつ「誰でも撮影できる現実味のある写真」を発信することが大事だと考えました。そこで、SNS上で最近注目されている「奥行きのある背景・人物」や「情緒が伝わりやすい」写真を発信することが有効だと考えました。標津町では、野付半島や標津湿原が適するのではないかと思います。また短い動画は写真では伝えきれない臨場感などを伝えることができるメリットもあるため、写真と動画を使い分けるべきだと考えます。
 次の「観光対象の周辺情報へのアクセス性」によって旅行動機が喚起される人に向けては、複数の関連情報が簡単に収集できることが重要だと考えました。そこで、具体的に「Googleマップ」や「公式サイト」などの中身を充実させ、これらのツールを利用してもらうように働きかける必要があると考えます。
 3つ目の「趣味の世界におけるストーリー性」によって旅行動機が喚起される人に向けては、情報の更新が高頻度に行われていることが大切だと考えました。例えば、マニアが関心を持つようなスポットの特徴や歴史、イベント情報を載せることが有効的な手段だと思います。
 旅行動機を喚起させるためにはターゲットに合わせた方法で情報を提供するとともに、複数のパターンを想定し、それに合わせたさまざまなアプローチが必要であると考えました。また、報告会では他世代に向けた情報発信の手段や、予算やアクセスの問題などのご意見もいただくことができ、非常に貴重な経験になりました。今回学んだことを今後の卒業研究やゼミ活動に生かしていきたいと思います。
 最後に、標津町役場の齋藤さまをはじめ、プロジェクトにご協力いただいた皆さま、このような学びの機会を与えてくださり、誠にありがとうございました。

また標津でプロジェクトを行いたいと感じた成果報告
 国際観光学部3年 井上風花

 2月22日、北海道標津町にて「標津プロジェクト」の成果報告を現地の方々へ行いました。昨年10月に行ったフィールドワークをもとに、Z世代がどのような情報で旅行動機が喚起されるのかについて考えました。当日は、どのような時にZ世代がスマートフォンでSNSを視聴しているのか、3つのパターンによる旅行行動の違いを説明した上で、それぞれのパターンに向けて標津町でできる情報発信の方法を提案するという流れで発表しました。
 今回のプロジェクト提案内容を作成するにあたって、私たちが日頃何気なく行っている2つの行動を言語化するという作業に何度も苦戦しました。
 1つ目は、プロジェクトメンバーそれぞれの旅行行動について振り返り、行動のパターンを明らかにすることです。普段から当たり前のように使っているSNSをいつ、どのようなタイミングで視聴し、保存や見返しを行っているのかということを具体的に説明することはとても難しかったです。しかし、これを細かく行ったことにより、男女による大きな違いや趣味を軸に動いている人の違いなどを見つけることができ、それぞれのパターンに合わせた情報の打ち出し方を考えることにつながりました。
 2つ目は、発信するコンテンツの選別です。例えば、食事は動画よりも写真の方が魅力を伝えられるが、広大な景色の場合は動画の方が良いというように、素材によって写真や動画を普段から何となく使い分けています。しかし、どのように使い分けているのかを改めて考え直し、説明しようとするとわからないことが多かったです。無意識に行っていることにも何らかの理由があるため、それを導き出すために「ボリューム感のある食事はその迫力を伝えるために写真で、カメラのフレームに入りきらないような広大な景色はショート動画で」というように、皆んなで何度も話し合って考えました。
 発表当日は、若い方から年配の方まで幅広い年代の町民の方々が足を運んでくださり、感想や質問をいただきました。SNS世代ではない年配の方も私たちの内容に対して質問を投げかけてくださったことで、多くの町民の方々が標津町をよりよくしていき、盛り上げたいという気持ちが伝わり、プロジェクトの中で一番印象に残りました。今回のプロジェクトはこれで終わりますが、来年度も機会があれば参加し、今回提案した内容を実践したり、標津町の方々と協力して地域づくりを考えたりしてみたいです。
 標津町役場の齋藤さまをはじめとする、標津町の方々のご協力のおかげで、多くの学びを得られたプロジェクト活動となりましたことに、心から感謝いたします。本当にありがとうございました。