マリンレジャー以外の魅力を引き出すために資源調査を行いました

 森重ゼミでは、「自ら問題を発見し、解決する力を身につける」ことをめざし、3年次に実施するフィールドワークの調査対象地域を毎年ゼミ生自身で話し合って決めることにしています。今年度はゼミ生による話し合いの結果、沖縄県久米島を調査対象地域に選びました。
 沖縄というとマリンレジャーが盛んで、沖縄を代表するイメージの1つにもなっています。久米島も「はての浜」をはじめ、海水浴やダイビング、海釣りなど、マリンレジャーで多くの観光客を集めています。しかし、マリンレジャーはどうしても夏期が中心になり、それ以外の季節の集客が難しい状況にあります。一方、久米島にはマリンレジャー以外にもたくさんの魅力があります。そこで、今年度のゼミ生は夏期以外にも観光客が久米島を訪れるよう、マリンレジャー以外の魅力を引き出すことを目的に調査を進めることにしました。
 前期授業では、現地調査の際にできるだけ効率的に調査ができるよう、ウェブサイトや資料などを用いて久米島の魅力を調べました。そして、9月18日から4日間の日程で現地調査を行いました。今回は久米島町観光協会への聞き取り調査と、4つのグループに分かれて行った資源調査のうち、「SNS映えするスポット」の資源調査を担当したゼミ生の報告をお伝えします。
 調査を実施するにあたり、久米島町観光協会の方々からたくさんの情報を提供していただきました。多大なるご協力をいただきましたことを、心より御礼申し上げます。(森重昌之)

当日の現地調査の様子

  • 観光協会での聞き取り調査の様子

  • 観光協会での聞き取り調査の様子

  • 観光協会の方々と記念撮影

  • 畳石での資源調査の様子

  • 畳石

  • 宇江城城跡からはての浜を眺める

参加したゼミ生の報告

久米島の現状とイメージの違い
 国際観光学部3年 奥野滉貴

 私たち森重ゼミは9月18日から21日にかけて、沖縄県久米島へフィールドワークに行きました。私たちは事前に久米島町観光協会に連絡を取り、フィールドワーク初日に久米島町観光協会で聞き取り調査を行いました。久米島町観光協会の方々は、私たちを温かく迎えてくださいました。現地調査の中で、「自然」、「海洋深層水」、「インスタ映え」、「歴史」の4つのグループに分かれて行うことにしていたので、それぞれ聞きたいことを質問しました。
 久米島の観光の現状は、7月から8月にかけてピークを迎え、主にマリンスポーツを目当てに訪れる観光客が多いとのことです。逆に、オフシーズンは1月下旬から3月にかけてだそうです。オフシーズンのメリットとしては、旅行代金が安いとのことです。オフシーズンには、マラソン大会やウォーキング大会などのイベントを開催するほか、3月にはカンヒザクラが咲き、新たな観光資源になっているそうです。外国人観光客は年間100人ほど訪れるそうで、主に中国人と台湾人が魚釣りを目的に、また欧米人はのんびり過ごすことを目的に、長期滞在することが多いとのことでした。
 私はインスタ映えのグループでしたので、インスタ映えのスポットを尋ねたところ、はての浜や畳石、久米の桜、宇江城城跡、星空などを教えていただきました。久米島空港の近くのレンタカー店舗のそばに車海老のマークがあり、そこから久米島を一周すると、インスタ映えスポットが周りやすいようです。この時、久米島の自然は海だけではないと考えました。
 実際に久米島町観光協会に聞き取り調査を行い、事前に調べたり考えたりしていたイメージが変わりました。私は久米島でマリンスポーツ以外の観光資源を探し、多くの観光客にどの季節でも観光客を集客できるかを考えていました。しかし、久米島観光協会の方は、観光客がたくさん来ることより、久米島で観光客が満足できるかどうかを重視されていました。観光客の満足度を上げることでリピート率も上がり、安定して観光客を集客することができると考えました。また、久米島でインスタ映えするものを調べていましたが、私たちが思い浮かぶインスタ映えというのは、「オシャレ」や「可愛い」といったイメージであると思います。しかし、実際に久米島町観光協会の方が考えるインスタ映えは「写真映え」のことであり、自然を使った良い写真のことを考えておられました。久米島には海以外の自然が多くあります。それらの自然を使って多くの観光客に満足していただき、集客できればよいと思いました。

久米島の課題とこれからの動向
 国際観光学部3年 立居泰賀

 私たちは、久米島の細かな情報を知るために久米島町観光協会に聞き取り調査を行きました。
 まず、久米島のオンシーズンは7月と8月で、主な観光資源はマリンスポーツとダイビングでした。逆にオフシーズンは11月から6月で、オンシーズンとは異なり、月ごとにさまざまなイベントが行われていました。1月から2月はホエールウォッチングや久米島のんびりウォーク、4月はクメジマボタル観賞会、10月は久米島マラソン、11月は久米島車えびフェスタ、12月は久米島産業祭りなど、たくさんのイベントがあります。オフシーズンのメリットは飛行機などの交通運賃が比較的安くなることです。しかし、デメリットとして、冬場のアウトドアはかなり厳しく、イベントだけになってしまうことです。イベントを行う場合には運営するスタッフも必要なので、観光協会の方から「一緒に取り組んでみないか」といった話や「新しいビジネスモデルを提案してほしい」など、興味深い議論もありました。
 久米島が抱えている課題として、観光客を呼びたいが、飛行機のキャパシティがあり、1日せいぜい500人程度の観光客しか呼べないという点があります。また、宿泊施設も少ない上に老朽化も進んでいて、あまりベストな状態ではないという課題もありました。外国人観光客は年間約100〜200人で、欧米人がゆっくり過ごすことを目的に久米島を訪れているそうです。問題点として、バスの車内アナウンスをはじめ、ほとんどのところで多言語に対応できておらず、外国人観光客の受け入れに苦戦しているとのことでした。観光客数の推移では、9月が多くも少なくもなく、受け入れ側にとってもベストだそうです。
 次に文化面では、琉球王朝時代には久米島は情報発信の島であり、また中国からの使節団が最初に到着する島が久米島でした。情報発信の方法は狼煙で合図を出し、島づたいに王宮まで伝えていました。中国から伝わった文化もあり、風水を感じられる場所もありました。
 このように、久米島には多くの観光資源やイベントがあり、実際にそれらの魅力を肌で感じることができたので、今後は久米島を訪れたことのない方々にどのようにして伝えていくかが課題になると感じました。また、天候が悪い時でも楽しい魅力を伝えるようにするにはどうすればよいかを考え、久米島町観光協会の方々に伝えられるようにしたいです。人の心を動かせることや、安らげる島の観光をつくり上げ、多くの方々に久米島のマリンレジャー以外の新たな観光資源の魅力を伝えられるようにしたいです。

インスタ映えでのハッシュタグの可能性
 国際観光学部3年 木村優吾

 インスタ映えチームの2日目は、畳石ビーチ、パイナップル園、おばけ坂、ユナミファクトリー、そしてヤジャーガマと呼ばれる鍾乳洞を散策し、各スポットでインスタ映えする場所を探すために活動しました。このような目的を設定した理由として、久米島はマリンスポーツ、いわゆる海の観光資源が豊富ですが、マリンスポーツ以外の観光資源を求めて訪れる観光客が少ない現状にあります。そこで、インスタグラムのハッシュタグを使い、インスタグラムを利用している人びとに、久米島には海以外にも魅力があることを証明できればと思い、フィールドワークを行いました。
 最初に訪れた畳石ビーチで遊んでいる観光客にお話をうかがうと、「久米島に4日間滞在しているが、海にしか来ていない」と話していました。次に訪れた観光スポットのパイナップル園では、ドライバーの休憩所として観光客が利用しているようでした。パイナップル園は、畑に入ってパイナップルと一緒に写真を撮る若い世代の姿が見られました。3つ目のスポットは、自動車を停止させ、ニュートラルの状態にすると、下り坂であるにもかかわらず、自動車が坂を上っていく不思議な現象が起きる「おばけ坂」です。起こりえない現象ですので人気があってもおかしくないスポットですが、わかりにくい場所にあるので、観光客が訪ねにくいスポットになっています。案内があると、より観光客を呼び込むことができるように思います。
 4つ目のスポットは、ユナミファクトリーと呼ばれる、老若男女が訪れる久米島屈指のカフェです。ここのカフェは、高級食材で知られる車海老をリーズナブルにいただけるカフェです。店長にお話をうかがうと、2016年にオープンして以来、多くの地元客や観光客が訪れ、島になくてはならない存在になっているとのことです。何よりもオシャレなカフェですので、写真も映えます。インスタ映えを目的に観光客が訪れることも多いです。そして、最後に訪れたスポットが、ヤジャーガマと呼ばれる鍾乳洞です。この洞窟は真っ暗で、道が整備されていないところもあり、1人で訪れるにはやや危険ですが、「久米仙人」と呼ばれるガイドがボランティアで鍾乳洞の不思議な光景を見せてくださいました。暗闇の鍾乳洞を抜けると、大自然の絶景が待ち受け、神秘的な風景を前に立ち尽くしてしまいました。
 海、自然、グルメを周り、それぞれの魅力、そして聞き取り調査をした結果、若い世代は海を中心とした観光形態になっており、高齢者の世代になると自然目的の観光が中心になっている現状がわかりました。インスタグラムが流行する現代では、ハッシュタグで世に広めることで、さらなる久米島の新しい資源を発見できる可能性があると感じました。

久米島でしか体験できない観光スポット
 国際観光学部3年 谷口歩夢

 私たち森重ゼミは、9月18日~21日に沖縄県の離島・久米島へフィールドワークに行きました。ゼミの中で自然、歴史、海洋深層水、インスタ映えの4つのチームに分かれ、それぞれチームごとに聞き取り調査や現地調査を行いました。私はインスタ映えチームでしたので、事前に大学で下調べした場所を周り、インスタ映えスポットを写真に残していきました。
 はじめに、「ハートの壁」というインスタ映えするスポットに行きました。住宅街の中にあり、建物自体はピザ屋で青色の建物です。その壁の一部の全面にハートが描かれています。住宅街でしたが、ひとつだけカラフルな建物でしたので、とても目立っていました。私たちはこの写真を撮ったとき、これは確実にインスタ映えするスポットだと思いました。最近はインスタグラムでオシャレなカフェを調べて訪れる若者も多いので、建物自体もオシャレなピザ屋ですし、壁をインスタ映えスポットにすることで、お客さまを店に集め、売上の増加につなげる効果もあるのではないかと思いました。
 2つ目は、ハイビスカスで写真を撮りました。ハイビスカスは沖縄にあるイメージが強く、私たちが住んでいる大阪では滅多に見ることがありませんが、久米島ではあちこちに咲いていて、とても興奮しました。赤色のハイビスカスで写真を撮ると、とても綺麗で現地でしか味わえない雰囲気がとても良かったです。ハイビスカスは赤色のイメージが強いですが、ピンクもあるようですので、ピンク色のハイビスカスを見つけて写真を撮るのも良いかもしれません。
 インスタ映えスポットの中で、私が最も感動した場所は宇江城城跡から見る久米島を一望できるところです。前には海、後ろには山、上を見ると青い空と白い雲があり、見た瞬間感動で言葉を失いました。これは宇江城城跡の上からしか見ることのできない景色ですので、私が1番オススメしたいインスタ映えスポットです。私たちは昼間に行ったのですが、夜に行くと星もきれいに見えるそうで、また違う景色を味わえてよいと思います。大阪では絶対に見ることができない景色ですので、私は本当にこの場所をオススメしたいです。嫌なことがあっても忘れることができる気がするくらいの絶景でした。
 現地を訪れている方々に、なぜ久米島に旅行に来たのかを聞き取り調査したところ、「沖縄本島や宮古島は観光地化してしまっている。その中で、久米島は自然が残っている場所だから」とのことでした。私は初めて久米島へ行きましたが、本当に伝えきれないくらい素敵な場所だと思いました。沖縄本島も良いですが、私は自然がまだまだたくさん残っている久米島の観光客をもっと増やしたいです。そのためにインスタグラムを使って集客できるよう考えていきたいです。