今回は観光行動に合わせた3つのツールを提案しました

 国際観光学部学生有志では、2014年から「インカレねむろ・大学等研究プロジェクト」に参加しており、今年度で6年目となります。このプロジェクトは大学のない北海道根室振興局管内で合宿を行い、根室管内の地域振興に向けたさまざまな提案を行う活動です。今年度は国際観光学部1~4年生12名がプロジェクトに参加しました。
 後期授業がスタートしてから毎週木曜日の放課後に集まり、現地調査の準備を行い、昨年11月には現地調査を実施しました。その後も毎週集まって議論を重ね、①根室管内を訪れるきっかけづくり、②根室管内を収集するためのしかけづくり、③また根室管内を訪れたいと感じるしくみについて考えてきました。そして、これらを一連の観光行動に整理し、①として道東PRポスター、②として謎解きマップ、③としてYES/NO診断という3つのツールを作成しました。インカレねむろ研究発表会が近づいてきた1月下旬からはほぼ毎日メンバーが集まり、発表資料やツール、発表原稿の作成を続けてきました。また、現地に到着後も発表練習を繰り返し、研究発表会に備えました。
 2月15日の「インカレねむろ・大学等研究プロジェクト2019研究発表会」には、北海道大学大学院や長崎大学大学院、帯広畜産大学、帝塚山大学など9組が参加していました。国際観光学部の学生有志はやや緊張した面持ちでしたが、練習の成果をいかんなく発揮し、大学院生の研究も多いなか、昨年度に続いて最優秀賞となる「インカレねむろ事業推進委員会長賞」を受賞しました。今回で3度目の最優秀賞受賞になりますが、学生もまさかといった表情で喜んでいました。
 以下では、当日の研究発表会の様子とその前に訪れた網走観光の様子を学生が報告します。(森重昌之)

当日の研究発表と活動の様子

  • インカレねむろ・研究発表の様子

  • インカレねむろ・研究発表の様子

  • インカレねむろ・研究発表の様子

  • インカレねむろ・質疑応答の様子

  • インカレねむろ・授賞式の様子

  • インカレねむろ・授賞式後の記念撮影(拡大してご覧になれます)

  • インカレねむろ・交流会での学生挨拶の様子

  • 能取岬で流氷を眺める学生

  • 博物館網走監獄を見学する学生

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参加した学生の報告

つながりを感じた研究発表会
 国際観光学部3年 森下恭生

 2020年2月15日、北海道別海町で行われたインカレねむろ・大学等研究プロジェクト2019研究発表会に参加しました。今回は、道東地域に足を運んでもらうきっかけづくりから現地での周遊、そしてリピーターの創出といった観光行動の一連の流れに沿った3つの提案をさせていただきました。
 提案の背景として、私たちは2014年からこの研究発表会に参加させていただき、さまざまな提案を行ってきましたが、いずれも現地に到着してから周遊促進を図ることを目的とした内容となっていました。そこで、今回は道東そのものを知ってもらう、訪れてもらうきっかけづくりから、もう一度足を運びたいと感じてもらえるしくみづくりも合わせて考えました。
 まず、きっかけづくりとして、PRポスターを提案しました。写真主体の構成にすることで、ポスターを見た人に視覚的に行きたい、どこなのだろうと感じさせ、自発的に写真の場所を調べてもらうことを狙いとしました。また、私たちが今までの活動の中で撮影してきた写真を採用することで、誰でもきれいな写真を撮れることをアピールしています。
 次に、現地での周遊について、謎解きマップを提案しました。昨年のドライブ調査により、道東観光は観光地間の距離が遠く、移動時間が長くなるという課題を発見していたほか、運営側のコスト面や周遊促進の面などから、最近全国各地で謎解きを絡めたイベントが行われていることの2点が、謎解きマップを提案した背景です。謎を解くためにスマートフォンで現地のことを調べたり、当初の旅程にはなかった場所に足を運んだりしてもらうことで、周遊の促進を狙っています。実際に自分たちで謎解きマップを作成し、研究発表会ではその中から問題の1つを例題として、傍聴者の皆さまにも挑戦していただきました。謎解きマップに関しては、研究発表会後に開催された交流会にて審査委員長を務められた北海道大学名誉教授とお話しした際、道東観光の周遊を手助けする良いツールだと嬉しいコメントをいただきました。
 最後に、リピーターの創出を目的としたYES/NO診断を提案しました。YES/NO診断は、診断した観光客にまるで現地の方から紹介されたかのような特別感を持ってもらうことで、もう一度ここを訪れたいという気持ちを行動に変換する手助けを促すことを狙っています。
 私たちは今回、3つの提案をしましたが、正直言ってこれだけではなかなか「きっかけ→周遊→リピート」の3要素は循環しないと考えました。この3要素の中に観光客と現地の方がつながり、旅行者が日常生活圏に戻った時に訪れた現地の方を想い、もう一度会いたいと思う気持ち、つまり「つながり」が生まれて初めて循環すると考えます。
 実際、私自身も今回のプロジェクトを通して、より「つながり」の大切さに気づきました。今年度は新しく参加したメンバーが多く、リーダーとして難しさもあったのですが、新しいメンバーがお世話になっている標津町の方々と楽しそうに話している姿を見たり、真剣に応援してくださる町民の皆さまの眼差しを見たりした時に、人と人の「つながり」は何よりも観光行動の源泉だと強く感じました。さまざまな方々に支えられ、リーダーとして素晴らしい経験をさせていただいたこと、また名誉ある賞を受賞できたことを誇りに思います。ありがとうございました。

思い出に残る最優秀賞
 国際観光学部2年 和田朱里

 北海道標津町の観光振興プロジェクトに参加している私たちは、昨年11月の北海道標津町での現地調査に続いて、2月13~17日の5日間、再度現地を訪れました。そして、15日に行われた「インカレねむろ・大学等研究プロジェクト2020研究発表会」に参加しました。
 標津町は雪で街並みや景色がとても変わっており、初めて来た場所のようでした。普段雪が降らない地域に住んでいる私には、とても新鮮に感じました。発表会当日は朝食を済ませた後、宿で最後の発表練習を行い、会場へ向かいました。会場に到着した途端に緊張し、不安な気持ちになりました。私たちの発表は最後から3番目で、北海道大学や長崎大学の大学院生の皆さんのほか、私たちと同じ大阪から手塚山大学の皆さんも参加されていました。他の大学の皆さんは北方領土についての発表やクジラの研究発表をされている方もいらっしゃいました。
 私たちは、この発表のために毎週木曜日の放課後20時まで、春休みに入ってからはほぼ毎日大学で準備してきました。私たちは国際観光学部ということで、道東訪問のきっかけづくりとして、今までに私たちや先生が撮ってきた美しい景色の写真を使って作成した「道東PRポスター」、道東旅行中の周遊促進ツールとして、実際に私たちが現地調査を行って作成した「謎解きマップ」、そしてリピーター獲得を目的に、私たちが現地でお勧めする場所や施設などを診断しながら伝える「yes/no診断」という、3つの観光行動の流れに沿った提案を発表しました。
 私はまとめの担当でしたが、舞台に立った途端さらに緊張し、暗記していた原稿も忘れそうになりました。しかし、メンバーが後ろで見守っていてくれていたので心強くなり、何とか無事に発表を終えることができました。この時、このプロジェクトで仲良くなっただけなのに、これほどまで支えになる仲間になっていたのだと改めて感じました。
 昨年は最優秀賞を受賞したと聞いていたので、結果発表はとてもドキドキしましたが、無事2連覇することができました。他にも素晴らしい発表がたくさんあった中で、私たちが最優秀賞を受賞できたことは本当に嬉しかったです。最優秀賞をいただけたのは、私たちを温かく見守り指導してくださった先生と、初めての参加で何もわからない私たちを引っ張ってくださった気さくで優しい先輩方のおかげだけです。さらに、11月の現地調査でも快く迎えてくださり、お世話になった標津町の地域の方々のおかだと強く感じています。このプロジェクトでの活動や経験は、私の大学生活の中で忘れられない、大切な思い出となりました。参加して本当に良かったです。

道東・標津町で得たさまざまな経験
 国際観光学部1年 宮本脩年

 私たちは2月15日、北海道別海町で開催された「インカレねむろ・大学等研究プロジェクト2019」に参加しました。インカレねむろ・大学等研究プロジェクトの参加は初めてということもあり、発表ではとても緊張しました。
 今回の発表では、「道東地域の観光客誘致に向けた一連の旅行促進ツールの提案」を行いました。過去に先輩方が提案したものは、道東に訪れた観光客をターゲットにしたものでした。今回はきっかけ、周遊、リピートという観光行動の一連の流れに沿った提案をしました。
 まず、きっかけにあたる「道東PRポスター」を提案しました。このポスターには、ポイントが2つあります。1つ目は、思わず行きたくなるような美しい景色を盛り込むことです。そうすることにより、ここに行きたいと思わせることができると考えました。2つ目は、誰でも美しい写真を撮影できることです。道東はプロの写真家でなくても美しい景色を撮影することができます。キャッチフレーズとして、「プロの写真?いいえ、素人です。」と入れることで、誰でも美しい景色を撮影できるという要素を入れました。
 次に、周遊にあたる「謎解きマップ」を提案しました。私たちが行ったドライブ調査で、道東観光における2つの課題を発見しました。それは、観光地間の移動距離が長いということと風景があまり変わらないということです。しかし、移動時間が長いという条件を変えることはできないので、その時間を謎解きの楽しみの時間と捉え直します。謎解きマップの使い方は、問題を解き、答えとなる場所を見つけます。そして、その答えとなる場所の写真を撮ります。すべての問題を解き、写真を撮ると、何らかの景品を獲得できるというものです。謎解きマップで期待できる効果として、1つに観光地や観光施設に立ち寄ってもらうきっかけになります。また、問題をエリアごとに変えることによって、観光客の周遊促進につながると考えました。
 最後に、リピートにあたる「Yes/No診断」を提案しました。観光客の行動心理として、旅行先での満足感と地域についての新たな発見が合わさることで、リピーターを創出できると考えました。「また行きたい」と感じた観光客が地域の新たな魅力を発見します。その発見により、再度その地域への興味がわき、リピーターの行動を起こします。次回訪問時をイメージさせることで、「リピートしたい」という心理を行動へと変換する効果が現れます。これら3つの提案は、観光行動の一連の流れに沿った活用ができると考えました。一方通行な観光行動の一連の流れは、「つながり」があることによって初めて循環するのです。
 今回、初めてインカレねむろに参加でき、とても嬉しく思います。緊張もしましたが、先生や先輩方からアドバイスをいただき、堂々と自分なりに発表することができました。参加したメンバーの努力が身を結び、見事最優秀賞を受賞できました。この賞を受賞したことで、標津町に対して少しでも恩返しができたのではないかと思います。今後も標津町の観光の発展に向けて取り組みを続けていきます。

初めての学びがたくさんあった研究発表会
 国際観光学部1年 細川渚紗

 私たちは2020年2月13日から17日まで、北海道標津町を訪れました。昨年11月にも訪れましたが、前回は現地調査で訪れ、今回は前回の現地調査の成果を「インカレねむろ大学等研究プロジェクト2019研究発表会」で発表するために訪れました。この研究発表会は、道東地域で現地調査を行った大学生や大学院生が参加し、その研究成果を発表する大会です。私は初めて、この研究発表会に参加しました。他大学はとても興味深い研究もあり、勉強になりました。
 私たちは「道東地域の観光客誘致に向けた一連の旅行促進ツールの提案~きっかけも思い出も道東で~」について発表しました。発表の内容は大きく分けて3つありました。1つ目は旅行のきっかけづくりとしての「道東PRポスター」の提案、2つ目は周遊促進としての「謎解きマップ」の提案、3つ目はリピーターを促進するための「Yes/No診断」の提案を行いました。
 この3つの提案を完成させるために、私たちは現地調査の後、まず旅行促進ツールとしてどのようなものが使えるかを考え、たくさんのアイディアを出し、その中から3つに絞り込みました。進めていく中で、私は「謎解きマップ」と「Yes/No診断」のデザインを考え作業を担当しました。何もかもが初めてで、先輩に頼りっきりになってしまいましたが、「Yes/No診断」の1ページを任され、メンバーのアドバイスや手助けもあり、完成できた時はとても嬉しかったです。最終的にはずいぶん修正が入ったのですが、研究発表会の際に自分がつくったページがスクリーン上に映し出された時は嬉しかったです。
 提案が完成してから発表会までは、何度も発表練習を行いました。私たちが頑張ってきたことを大勢の前で発表することは初めての経験で、とても不安でした。しかし、いざ発表してみると、他大学の皆さんや審査員の皆さんが興味を持ってしっかりと聞いてくださっていることが伝わり、少し緊張もしましたが、自信を持って発表することができました。審査の結果、私たちは最優秀賞である「インカレねむろ事業推進委員長賞」をいただくことができました。これは先生や先輩方のおかげです。この時、このプロジェクトに参加できたことがとても嬉しく、良い経験になったと感じました。
 今回、特に感じたことは人とのかかわりです。観光協会の久保田さんが私たちを野付半島に案内してくださったり、そこでチカ釣りをしていた現地の方が釣り体験をさせてくださったり、昼食に入ったそば屋の店員さんと話した際に研究の応援をしてくださったり、発表会の後に他大学の皆さんや現地の皆さまとかかわる懇親会を開いてくださったりと、現地の方々にとてもお世話になりました。本当にありがとうございました。現地の皆さまのおかげで、とても充実した機会になりました。とても魅力ある場所で研究できたことを嬉しく思います。これからも標津町の魅力を伝えるために頑張っていきたいです。

壮大な自然と監獄での生活を感じることができた網走
 国際観光学部4年 安田知弘

 私たちは2020年2月15日に開催されたインカレねむろ・大学等研究発表会2019と、その翌日の現地報告会に参加するため、2月13日から5日間北海道に赴きました。その中の1日を使って、網走市を訪れました。私自身、標津町プロジェクトを4年間やってきましたが、今までに網走を訪れたことが一度もありませんでした。もちろん、後輩たちも初めてでしたが、彼らと同じくらいワクワクし、久しぶりに新鮮な気分を味わうことができました。
 まず、最初に流氷が接岸していると聞いていた能取岬へ向かいました。能取岬はオホーツク海に面していることから海風が強く、今年が暖冬であることを感じさせない寒さでした。海を見るとたくさんの流氷が来ていて、自然の力でここまで来るのだと思うと、感激しました。流氷はタイミングによって接岸しないこともあるので、私たちが行った時に見ることができて良かったです。
 次に、博物館網走監獄に行きました。かつて、実際に網走刑務所として囚人を収容していたところで、その施設が現在も大切に保存、継承されていることに感心しました。また、旧網走刑務所の建造物の半数以上が国の重要文化財や登録有形文化財として登録されていることがわかり、歴史的に見ても重要な場所であることを実感しました。施設の内部は囚人が作業する味噌・醤油蔵や漬物庫、耕転庫などがあり、実際にマネキンを使って再現されていました。また、作業場以外にも囚人たちが入る浴場や極悪囚人が入れられる独居房もありました。そして、博物館網走監獄の目玉である放射状に広がる5棟の舎坊を見学しました。ここは複数人で入る牢屋や1人で入る牢屋など、さまざまな形態の牢屋がありました。実際に牢屋の中に入ってみると、複数人で生活するには少々窮屈な空間でした。また、内側から外側がはっきり見えないような工夫をしていることもわかりました。昔は現在の刑務所と違い、整えられた設備がなく、道路開拓や土地開拓などの厳しい肉体労働が行われていたことがわかりました。このような囚人がいなければ今の北海道の道路や土地が開かれていないことを思うと、ありがたさのようなものも感じました。
 今回の網走訪問を通して、流氷のような壮大な自然の力や美しさを自分の肌で体験できました。また、博物館網走監獄ではかつての囚人たちの生活や労働を残された歴史的建造物とともに学習できて、とても貴重な経験になりました。大学生活最後にこのような貴重な経験をすることができ、本当にうれしく思います。

提案内容を改めて実感できた道東訪問
 国際観光学部1年 長岡実央

 2月13日から17日まで道東を訪れ、インカレねむろ・大学等研究プロジェクト2019研究発表会や現地報告会に参加しました。研究発表会では、「道東地域の観光客誘致に向けた一連の旅行促進ツールの提案~きっかけも思い出も道東で~」をタイトルに、私たちの提案について発表しました。その結果、最優秀賞に当たるインカレねむろ事業推進協議会長賞を受賞できました。また、現地報告会では研究発表会での提案に加え、バス旅の提案もしました。お褒めの言葉や貴重なご意見をたくさんいただいたことで、新たな発見もでき、その発見を次のアイディアにつなげていきたいと感じました。
 そして、滞在期間中には流氷や丹頂を見に行ったり、道の駅や博物館網走監獄なども訪れたりして、現地でしかできない体験をすることができました。他にも、移動中の車窓からも広大な大地に真っ白に積もった雪景色や、野生の動物の姿などを見ることもできました。普段大阪で生活している私たちにとって、なかなか見ることができない光景はとても新鮮で、感動しました。昨年11月にも今回の発表に向けた現地調査のために道東を訪れましたが、私たちの目に映る北海道の印象はまたガラリと変わり、この時期ならではの魅力を新たに知ることができました。
 また、グループで行動していたり、現地の方が見慣れている光景を私たちがじっと見ていたりしたこともあってか、行く先々の店員さんや観光客から「どこから来たのか」、「何をしに来ているのか」などと声をかけていただくことが多く、お話しする機会がたくさんありました。私たちは提案の中で、現地の方とのつながりが観光行動の流れを循環させるための重要な要素になるということを述べました。今までもそれを実感することはありましたが、提案内容に交えたことで、現地の方とのつながりや交流に対する意識が強くなっており、このタイミングでつながりを実感できたことで、改めてその重要性を感じることができました。それにより、提案への思い入れや発表を通して伝えたいという気持ちも強くなりました。
 このプロジェクトに参加してすぐの頃の私は、標津という地名すら読めず、道東についての認識もあまりありませんでした。しかし、活動を通して地域についてのさまざまな調査を行い、現地を訪れて魅力を実感することができ、さらにそこで出会ったたくさんの方々と交流することで、地域への愛着がわき、より興味が深まりました。この感覚や魅力をもっと広く発信していくことで、少しでも尽力できるよう、また次回に向けてさらにアイディアを練っていきたいと考えています。