第1回卒業研究発表会を開催しました
4年生の卒業研究発表と3年生の研究成果発表を行いました
卒業研究とは、大学生活における研究成果をとりまとめた集大成の1つといえます。また、たんに研究成果をまとめるだけでなく、背景・目的から現状分析、課題設定、調査・分析、考察、結論に至る一連のプロセスを学ぶことにも意義があります。しかし、4年生が長い時間を費やして制作した卒業研究を他者に伝える機会が少ないことから、1月20日(月)に森重ゼミでは初めてとなる卒業研究発表会を開催しました。
当日は卒業研究を提出した4年生7名が発表しました。それぞれの研究テーマと要旨は以下の通りです。また、淡路島をフィールドに研究している3年生も2組に分かれ、研究成果を発表しました。発表会には、3、4年生のゼミ生に加え、今年4月から配属になる2年生も加えた計39名が参加し、熱心に発表を聞くとともに、積極的な質疑応答も行われました。卒業研究発表会終了後には、カフェテリアで懇親会も開かれ、学年を越えた親睦を深めました(報告:森重昌之)。
当日は卒業研究を提出した4年生7名が発表しました。それぞれの研究テーマと要旨は以下の通りです。また、淡路島をフィールドに研究している3年生も2組に分かれ、研究成果を発表しました。発表会には、3、4年生のゼミ生に加え、今年4月から配属になる2年生も加えた計39名が参加し、熱心に発表を聞くとともに、積極的な質疑応答も行われました。卒業研究発表会終了後には、カフェテリアで懇親会も開かれ、学年を越えた親睦を深めました(報告:森重昌之)。
写真−当日の様子
卒業研究のテーマおよび要旨
空港の魅力を生かした目的地化の可能性−神戸空港を事例に(No.1)
国際観光学部4年 松本優吾
空港法に改定される以前、空港を管理する国や地方公共団体にとって、空港は飛行機が安全に離発着できればよい交通インフラの一部であると捉えられてきた。しかし、2006年に空港整備法から空港法に改定された際、空港法の目的として、地域経済や活力に関する文言が含まれ、空港が周辺地域にさまざまな効果をもたらすインフラとして理解されるようになった。そこで、空港には展望デッキや商業施設など、たくさんの魅力があることから、その魅力を活かし空港が目的地となり得る可能性について検討した。本論文では、それを実証するために、神戸空港を事例に取り上げ、現在の空港がどのような状況にあるのかを調査し、目的地になり得ているのかを分析した。その上で、飛行機乗り場としての役割だけでなく空港の魅力を活かし、空港が本当に目的地としてなり得るのかを考えた。調査の結果、神戸空港は年に数回イベントを開催するなど、ある程度の活動は行っているものの、魅力ある目的地となるには不十分であることがわかった。そこで、神戸空港の魅力を発信しながら目的地化するための3つの提案を示した。これらの提案を通して、空港の魅力を高め、地域住民からの理解を深めることで、神戸空港が目的となり得ると考えた。
石見銀山における観光まちづくりのあり方についての研究(No.2)
国際観光学部4年 住田直哉
本研究は、まず世界遺産がどのようなしくみで成り立ち、どのような基準で選ばれているかを明確にし、世界遺産と日本の法律がどのような関係にあるかを論じた。また、観光まちづくりの考え方についても整理した。そして、島根県大田市にある世界遺産の石見銀山を事例に、世界遺産に登録されることで起きる効果と弊害を調査し、観光客の間違った歴史の解釈から地域住民に嫌な思いをさせたり、「がっかり世界遺産」というレッテルを貼られたりするなどの弊害があることを見出した。その要因として、遺産の価値が伝わりきれておらず、価値がわかりにくい観光地となっていることがあげられる。この課題を解決するために、ガイドを増やし、自転車で周っている観光客と一緒にガイドも周る、新たなツアーを考えることなどで、価値をわかりやすく伝えるしくみが必要だと考えた。そうすることで、資源と定住環境、来訪者満足度が調和された観光まちづくりのあり方に近づくのではないかと考える。
吉野における地域資源を活用したオフピークの観光振興の可能性(No.3)
国際観光学部4年 山田瑞穂
奈良県の吉野町は年間100万人以上の観光客が訪れる全国でも有名な桜の観光地であるが、観光客は桜シーズン短期間に集中しており、桜に依存している観光地であるといえる。その桜も、近年立ち枯れなどの被害により衰退してきている。吉野町をさらに魅力のある観光地としていくためには、従来観光の中心となってきた「桜」を保全していくことと併せて地域の新しい魅力や観光資源を掘り起こし、定着させ、発展させていかなければならない。調査の中で吉野町には自然、歴史、遺産など魅力のある資源が数多くあることがわかった。しかし、桜の観光地として成熟しているため、その他の要素が入り込める部分が少ない。吉野町をさらに魅力のある観光地として振興するためには、見つけ出した資源に磨きをかけ、吉野町でしか体験することができないメニューをつくり出すこと、交通アクセスや桜以外の観光資源についてPRしていくことが施策といえる。
新たな奈良の魅力を伝えるテーマ型観光の可能性(No.4)
国際観光学部4年 土川裕真
各都道府県には、その土地のイメージが付いている。北海道なら大自然や新鮮な海の幸、沖縄県ならきれいな海や常夏などが代表的であるが、奈良県のイメージといえば鹿と大仏である。この鹿と大仏のイメージがあまりにも強すぎて、鹿や大仏が見られる奈良公園周辺を観光しただけで、奈良県を満喫した気分になってしまう。そのため、エリア型観光になり、奈良県全体の魅力が伝わりにくくなっている。また、鹿や大仏のイメージだけでは、若年層の観光客の興味・関心も低迷してしまう。さらに、奈良県が宣伝している情報媒体においても、大正以前の観光資源に偏っており、寺社仏閣以外のイメージが伝わりにくくなっている。これらの現状と課題を踏まえ、本論文ではエリア型観光から「農林業」などのテーマ型観光への転換を提案した。テーマ型観光に転換することで、観光客は自然や食など幅広く新たな奈良県の魅力を感じることができる。さらに、若年層の観光客の興味・関心の向上も期待できる。その結果、奈良県全体に観光の効果が波及し、国内宿泊旅行者数の増加にもつながっていくと思われる。
グリーンシーズンにおけるスキー場の有効活用−兵庫県養父市の若杉高原大屋スキー場の事例(No.5)
国際観光学部4年 伊達知美
スキー場と言えば冬のイメージを持つ人が一般的であるが、1年を通して利用することで経済的に自立でき、周辺の魅力向上も期待できる。そこで本研究では、グリーンシーズンにゲレンデを活用している若杉高原大屋スキー場を事例に、どのようにすれば冬以外の季節もスキー場を効率よく利用できるかについて調査した。利用者が何をスキー場に求めているのかを明らかにし、ニーズに沿ったサービスの提供によってスキー場の活性化を図る。そのために、サマーゲレンデ・バグジャンプ・ウォータージャンプの利用者126名と、キャンプ場利用者55家族にアンケート調査を実施した。その結果から、サービス面ではアクセス、体験プログラムを実施すること、携帯電話などの通信環境の改善、施設面では個人ロッカーの貸し出し、トイレ環境の改善、水遊び施設の設置の必要性を提案した。これらの課題を克服することで、現在の利用者だけでなく新たな利用者を増やすきっかけになる。現存するスキー場を有効活用することで、スキー場が経済的に自立できるようになり、山間地域に雇用を生み出すことができる、地域活性化につながるのではないかと考えた。
交流人口の増加をめざす島観光の可能性−東京都青ヶ島村を事例に(No.6)
国際観光学部4年 米田大輝
本論文は、東京都青ヶ島村を事例に交流人口の増加をめざす島観光の可能性について検討した。離島は島民がいてこそ成り立っているが、島民から見た青ヶ島村の良い未来に向けて、観光をどのように活用していけばよいのであろうか。まず、青ヶ島村の現状を知るため、実際に現地調査を行った。その結果、本土から青ヶ島村までのアクセスが不便であることや島民がそのままにしていて埋もれてしまっている観光資源、ビジネスマン向けとなってしまった宿泊施設などの課題を見つけた。これらの課題の要因として、青ヶ島村の観光の受け入れ体制が整っていないことや人口が少ないことによるものだと考えた。観光客が懸念していたアクセス面を解消するとともに、観光資源や宿泊施設のサービスの改善を図るために、青ヶ島村の地形・地理を活かしたツアーを行うことを提案した。そこから、青ヶ島村の魅力に取り込まれた観光客が青ヶ島村に移住することで、人口の増加につなげられるのではないかと考えた。
ダンスを取り入れたツアーの実現可能性(No.7)
国際観光学部4年 重田紗希
ダンスには踊っている本人が感じる魅力がある。しかし、ダンスを敬遠する未経験者は、恥ずかしい気持ちや自分にはできないという諦めを抱えている。そのような気持ちを非日常へと導く観光の特徴を利用して、ダンスを楽しむツアーを考案し、未経験者でも気軽にダンスに触れ合える機会をつくろうと考えた。ツアーを考えるにあたり、それに相応しいダンスがあるのかについて、各国のダンスとその歴史を調べた。ダンスには誰にとってもうれしい魅力が数多く秘められている。実際にダンスの先生方や旅行会社窓口での聞き取り調査を行い、ダンスのもたらす効果や既存のツアーを調べた結果、ダンスを取り入れたツアーは現在、オプションとして用意されているだけであった。ダンスはダイエットや美容・健康にも良いとされているにもかかわらず、あまり人びとに浸透していないということがわかった。そこで、本論文では、ツアー参加者で毎朝エクササイズを兼ねたラジオ体操を行うなど、いきなりダンスに踏み込めない方へ向けたツアーを考案した。決して若年層だけをターゲットとしているのではなく、親子での参加や中高演奏の方でも気軽に取り組むことのできるツアーを提案した。
B級グルメを活用した観光振興の成功要因の分析−佐世保市と甲府市を事例に(No.8)
国際観光学部4年 室田咲紀
最近、各地でB級グルメブームが起こり、地域の活性化やまちおこしが盛んになり、それに伴い、その地域の観光も発展するケースが多くなってきた。そこで本論文ではまず、長崎県佐世保市の「佐世保バーガー」の取り組みを取り上げ、B級グルメが地域の観光資源となることを明らかにした。次に、山梨県甲府市の「甲府鳥もつ煮」の取り組みを調査し、観光ガイドや甲府市公式ウェブサイトに紹介することで、広く知られるようになったことを明らかにした。この研究を通して、佐世保バーガーも甲府鳥もつ煮も、もともとあった地元の特産品を生かそうとアイディアを出し、現代の人びとの口に合うように試行錯誤しながらつくり上げていき、地元の人の努力も大きな要因になっていることがわかった。また、マスコミなどにも取り上げられたこともその要因になっていることを指摘した。