宿泊客の増加に向け、出雲でフィールドワークを行いました(2)

出雲市内の観光資源を調査しました

 森重ゼミ3回生は、島根県出雲市の宿泊客数の増加に向けた取り組みを検討するため、9月16日から4日間、出雲市を中心にフィールドワークを実施しました。出雲市といえば出雲大社が有名ですが、他にもたくさんの魅力があります。2回目となる今回は、出雲市内の観光資源である島根ワイナリー、立久恵峡、須佐神社、八雲風穴、キララ多岐の視察結果について、ゼミ生が報告します。(森重昌之)

フィールドワークの様子

  • 島根ワイナリーにて

  • 石段を降りると涼しくなる出雲風穴

  • キララ多岐コテージでのバーベキュー

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参加したゼミ生の報告

地元の素材を生かす島根ワイナリー
国際観光学部3年 野崎楓

 私たちは島根県の出雲市で、9月16日から19日までの3泊4日で、1回目のゼミのフィールドワークを行いました。出雲市に日帰りではなく、宿泊客を増やすために、まず私たち自身が出雲市について知らなければならないという目的でフィールドワークを行いました。事前に訪れる場所を決めて調査をしました。その中で、私は「島根ワイナリー」について紹介します。
 島根ワイナリーは出雲市大社町に位置し、出雲大社から自動車で約5分の場所にあり、年間100万人以上が訪れる地元産ワインの大型テーマパークです。大社町は全国でも有数のハウスぶどうの名産地であり、特に4月から9月のデラウェアというぶどうの出荷量は全国一で、市場でも高い評価を受けているそうです。
 島根ワイナリーでは、ワイン醸造館と試飲即売館へ行きました。ワイン醸造館では99基の室外・室内タンク、仕込み作業など、ワインの製造工程を無料で見学できました。普段なかなか見られないワインの製造工程に興味が湧きましたが、当日は機械が動いていませんでした。しかし、見学コースの通路を歩いていると、2カ所ほどDVDが流れるところがあり、そこでワインの製造工程について詳しく説明されていてわかりやすかったです。試飲即売館は、約10種類のワインが無料で試飲できました。自動車を運転する人や未成年者で飲めない人たちのために、グレープドリンクが用意されていました。お気に入りのワインが見つかればその場で購入ができ、ゼミ生の中にはワインを実際に買っている学生もいました。試飲即売館ではお土産物が豊富の揃っていて、午後になるとツアーなどで立ち寄ってきたのであろうと思われる旅行者の姿が多く見られました。午前中に行くと、人がまだ少ないため、試飲も待たずに楽しんだり、お土産物もスムーズに見たりできるので、午前中に訪れることをお勧めします。今回、私たちは行くことができなかったのですが、他にも島根和牛と島根ワインを楽しむことができるバーベキューハウスなどもありました。
 今回島根ワイナリーに行ってみて、私たちが行ったときはツアーで立ち寄って行く観光客や年配の方が多く見られました。出雲大社から比較的近い場所に立地しているので、ツアーで立ち寄る観光客や年配の方を大切にしつつ、個人旅行者や若い人たちにも寄ってもらえればよいのではないかと感じました。そうすることにより、地元の素材を生かしたワインやバーベキューハウスで、島根和牛や野菜を知ってもらうことができます。出雲市の魅力をより多くの人へ伝えることができたらと思いました。

立久恵峡を利用しやすい観光地へ
国際観光学部3年 磯野晃

 私は今回、森重ゼミ3期生で9月16日から19日まで、島根県出雲市の宿泊客を増やすことを目的としたフィールドワークを行いました。その中でも、私は立久恵峡の実態や課題を模索し、考えることにしました。立久恵峡を調査場所として選んだ理由は、出雲市の観光地の情報を収集している際に、自然景観が有名で、インターネットやパンフレットでも大きく取り上げられており、観光客が多く訪れている可能性があり、ここを調査すれば宿泊客を増やすことにつながると考えたからです。実際に立久恵峡で調査を行った結果、2つの問題を発見することができました。
 1つ目は、立地と交通手段です。私たちはレンタカーを借りて現地へ向かいました。道は時間を要する山道でバスもなく、自動車以外でアクセスすることは難しいです。そのため、現地の駐車場には自家用車か、パッケージツアーのバスしか駐車されていませんでした。また、周辺の道路が工事中であったため、一車線の道路を警備員の手信号で交互に走らせ、渋滞が起きるほどの道路状況の悪さでした。こういったことが立久恵峡に訪れる観光客があまり多くない理由だと考えました。
 2つ目は自然景観を有効活用できていないことです。今回、私たちが立久恵峡を訪れた際に広大な敷地なのにもかかわらず、地図が少ないこと、そしてその地図があまりわかりやすいものとは思えませんでした。大きく立派な橋やバーベキュー場には観光客がたくさんいて、写真を撮っている人やバーベキューを楽しんでいる人がいました。しかし、肝心の立久恵峡の自然景観の観賞に訪れている人がほとんど確認できませんでした。立久恵峡は天にそびえたつ奇岩が絶景ということで有名ですが、下流にかかる不老橋から浮嵐橋まで遊歩道コースがいくつか設置され、回遊すれば1時間かかるほどで、自然観賞には適した環境が整っているにもかかわらず、回遊している人びとの姿が少なく、どの橋が不老橋なのか、どの遊歩道コースかを示す地図なども見当たりませんでした。リピーターの方は不自由がないにしても、新規顧客の方には適していないため、改善が必要だと考えました。新たに看板や地図、案内所などを設け、地図や遊歩道コースを記載したパンフレットを無料で配布するなどを行えば、観光客が増え、出雲の宿泊客増加につながると思いました。
 今回の出雲でのフィールドワークでは、出雲市が全体的に新規顧客の獲得にあまり力を入れているようには見受けられず、そうした地域もあることを学びました。また、観光客や宿泊客を増やせば地域が豊かになり、幸せになるとは限らず、ゴールは必ずしも1つではないことも学びました。今回のフィールドワークで学んだことを今後のゼミ活動につなげていきたいと思いました。

観光を通して人との出会いを体験しました
国際観光学部3年 上垣彩夏

 9月15日から19日の間の2日目、私たちのゼミは立久恵挟を視察するチームと、須佐神社と八雲風穴に行くチームに分かれ、私たちは須佐神社に向かいました。須佐神社はスサノオノミコトの御魂鎮めの神社として知られており、本殿は県重要文化財に指定されています。須佐神社には七不思議が伝わっているのですが、そのうち興味深かったもののひとつは「塩ノ井」です。これは本社前の小池であり、スサノオノミコト自ら潮を汲み、この地を清めたといわれています。その水はかすかに塩味がするとあったので、勇気を出して少し飲んでみましたが、言われてみればほんの少しだけ塩味がするかなという程度で、言われないとわからないほどでした。「飲用すれば新陳代謝及び糖尿病、通風等などの全身病に効果あり、浴用すれば慢性リュウマチ、諸種の麻痺に効果あり」とありましたが、「本泉は浴用を主とする」とあったので、飲んだことを少し後悔しました。奥へ進むと、スピリチュアルカウンセラーの方が最強のパワースポットとして紹介したことで知られる「大杉」がそびえたっています。私は「大杉さん」の存在を知らなかったのですが、両手をかざして触れてみると、なんだかパワーをいただいた気がしました。
 そして、自動車で山道をさらに奥へ走ると、真夏でも内部は10度以下の冷たい風が吹き出す「天然のクーラー」と呼ばれる、「八雲風穴」に到着しました。今年は9月15日までの営業ということで、残念ながら中を見学することはできませんでした。残念な気持ちで帰ろうとすると、1人の女性が「こちらへ来てみてください」と声をかけてくださいました。そこには一見、ため池の水をぬいたような四角形のくぼみのようなものがありました。「一歩ずつ近づくとパワーを感じますよ」という女性の言葉通り、段差を下りていくと、一段下りていくごとに温度が下がっていくのがわかりました。こんなに少しの動きだけで温度の変化を感じたのは初めてだったので、みんなで歓声をあげながら驚いていました。その女性は八雲風穴近くに湧き出る「福寿泉」という湧水を汲みに来るためにわざわざ広島県から来られたとのことで、私たちも帰り道にペットボトルに汲んで飲んでみました。この水はスサノオノミコトが産まれた際に産湯として使われたと言われており、そう言われるとパワーを感じました。この女性に会わなければ、八雲風穴の存在は私の中から完全に薄れていたことでしょう。このような人との出会いも旅の醍醐味だと感じます。
 今回のフィールドワークでは、いくつもの神社を参拝したので、手水場での手と口の清め方を完全にマスターできました。今まで「パワースポットめぐり」というジャンルの観光は果たしてどうなのかと思っていましたが、人びとの信心深い心を観光とリンクすることにより、お参りするという本来の目的を果たすのと同時に、人びととの出会いによって生み出される感動があっていいのかもしれないと、今回のフィールドワークで感じました。

朝と夜の魅力を兼ね備えたキララ多岐
国際観光学部3年 長坂恵

 9月16〜19日の4日間、島根県出雲市にてフィールドワークに行いました。私たちの主な活動内容は、出雲市の宿泊客数を増やすことを目的としています。出雲市は島根県の中で最も多く観光客が訪れていますが、その多くが松江市の玉造温泉に泊まる、あるいは日帰りで帰ってしまうのが現状です。宿泊客数を増やすためには、出雲市の朝・夜の魅力を見つけてPRすることで、朝・夜を出雲市で過ごしてもらえるのではないか、そして宿泊客数が増えるのではないかと考えて、出雲市で調査を行いました。
 出雲市多伎町の国道9号線沿いにある道の駅「キララ多伎」では、日本海を一望できるコテージやビーチ、温泉、レストランなどが設けられています。キララ多伎から海への階段を降りるとキララビーチがあり、夕刻には日本海に沈む夕陽によって、茜色に染まった海を見ることができます。この景色は、日本の夕陽百選にも選ばれたほどの絶景です。
 また、宿泊施設のキララコテージでは、季節によってイベントやプランが組まれています。コテージだけでなく、ログハウスやオートキャンプ場、バーベキューハウスもあり、私たちはバーベキューハウスを実際に利用してみました。バーベキューハウスを利用した日は平日だったにもかかわらず、多くの方が利用していたことに驚きました。利用していたのは地元の方や、私たちのように県外(岡山)から旅行で来られている方もいらっしゃいました。21時まで利用することが可能なので、ゆっくりバーベキューを楽しむことができます。
 また、キララビーチの沖では春から秋にかけて野生のイルカが遊びに来ることがあり、イルカを見ることができるそうです。朝や夕方の波のない穏やかな日に出会えることが多く、背びれが少し見えたり、ジャンプをしたりしている姿を見ることができます。しかし、月に3〜4回ほどしか現れないので、運が良ければ見えると言われています。
 今回の調査で、出雲市にはまだまだ知られていない良い場所があると感じました。島根県を訪れることが初めてということもあって、今回のフィールドワークでは得られるものがたくさんありました。また、朝と夜に注目して宿泊客数を増やすことを目的として調査していましたが、昼間の魅力をPRすることで出雲市での滞在時間が増え、宿泊客数にもつながるのではないかと思いました。出雲と聞くと「出雲大社」を想像し、それ以外の出雲市内の観光地を知っている人は多くありません。出雲市の観光地をPRして少しでも多くの方に知っていただき、出雲市を訪れて欲しいと思います。