第3回卒業研究発表会を開催しました

4年生が努力の成果を発表しました

 1月21日(木)、森重ゼミ2〜4年生43名が参加し、第3回森重ゼミ・卒業研究発表会を開催しました。卒業研究は大学4年間の集大成ともいうべきものです。今年度も課題設定に悩んだり、論理的な説明に苦悩したりするゼミ生がいましたが、何とか20,000字の卒業論文を書き上げました。そして、今春卒業予定の4年生14人が努力の成果を発表しました。4年生の卒業研究発表に続いて、3年生が香川県小豆島におけるフィールドワークの研究成果を発表しました。
 3年生は来年度取り組む卒業研究のイメージが、また2年生はこれから始まる専門演習での共同研究のイメージが湧いたのではないかと思います。卒業研究発表会終了後には、2年生が企画した懇親会が行われ、学年を超えた交流を深めていました。
 以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します(森重昌之)。

写真−当日の様子

  • 開会挨拶の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 質疑応答の様子

  • 質疑応答の様子

  • 研究発表を聞くゼミ生

  • 3年生の研究成果発表の様子

  • 卒研発表会終了後の全員での記念撮影

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卒業研究のテーマおよび要旨

日本においてランドオペレーターを定着させる方策(No.23)
 国際観光学部4年 東祐里

 本来、ランドオペレーターは海外旅行の際に、現地での宿泊や観光地、交通手段の手配や情報発信を行うものである。近年は着地型観光が注目されており、旅行会社の提供する情報だけでは各地域の網羅しきれない現状がある。そこで、ランドオペレーターを日本国内で日本人向けのものとして利用すれば、各地域のより鮮度の高い情報を発信することができる。そこで本研究では、日本国内において、日本人向けのランドオペレーターを定着させることを目的とした。先行研究として、経営面の問題と着地型観光への取り組みについて整理した。事例分析として、ランドオペレーション機能を持つ組織について、インターネットと文献による調査を行った。そこから、各ランドオペレーターの良い点、悪い点を抽出した。その結果を比較し、中でもインターネットの活用が特に重要なポイントであることがわかった。そこで、日本でランドオペレーターを定着させるためには、インターネットによる認知度向上が必要であることを明らかにした。

ラグビーW杯後の観光効果の持続可能性の検討−東大阪市を事例にして(No.24)
 国際観光学部4年 岡島美紀

 大阪府東大阪市はラグビーW杯2019の開催都市全国12会場の1つに選ばれたことで、大会期間中には国内外から多くの観戦者が訪れることになり、その経済効果が期待される。そこで、本研究では2019年以降もW杯がもたらす観光効果を一過性ではなく、長期間持続させるための方策を検討した。観光効果の持続方法については、大会効果の持続に成功した国際大会での取り組みの事例や訪日外国人観光客の消費動向を調べた。そして、東大阪市のラグビーW杯誘致における地域経済効果やラグビー観戦者の消費動向などを分析した結果、モノづくり観光以外に観光を目的に訪れる人は少なく、ラグビー観戦者は東大阪市以外の地域へ流れていることが明らかになった。W杯の観光効果を持続させるためには、個別に取り組まれているラグビー関連事業とモノづくり観光を組み合わせることが必要であると考え、他市の事例を参考に観光担当課の必要性と今後の観光産業のあり方に関する提案を行った。

映画祭を活用した地域活性化に関する研究−なら国際映画祭を事例として(No.25)
 国際観光学部4年 福崎美帆

 現在、世界各国で行われている映画祭の総数は800を超えるとされる。地域主導の映画祭は、経済効果や開催地の知名度を高める効果が見られるため、まちおこしの手段として取り入れられることが多い。奈良市では、2010年から民間有志主導で「なら国際映画祭」を開催している。そこで本研究では、なら国際映画祭の現状を明らかにし、地域活性化の手段として映画祭を機能させるためにはどのような要素が必要か検討することを目的とした。まず文献調査によって映画祭の概念と奈良市の観光の現状を明らかにし、なら国際映画祭の現状分析のため、映画祭関係者への聞き取り調査と第3回なら国際映画祭の来場者にアンケート調査を実施した。また、先進事例として「カンヌ映画祭」、「湯布院映画祭」、「ラ・フォル・ジュルネ」の3例を取り上げた。そして、なら国際映画祭を活用した地域活性化に向けて、?映画祭来場者が長期滞在するためのしくみづくり、?露出機会の増加によるPRの推進と閲覧しやすいウェブサイトの作成、?なら国際映画祭の持つ特性を活かした企画による交流の場の提供が必要であることを明らかにした。

北陸新幹線開業が沿線地域にもたらす影響(No.26)
 国際観光学部4年 上垣彩夏

 2015年3月に開業した北陸新幹線は、全国的に見ても、北陸にとっても多大なメリットを創出するが、同時にさまざまな課題が存在することも事実である。本研究は、北陸新幹線が北陸、特に石川県に与える正の効果を伸ばし、負の効果を軽減させるための手段を考察することを目的とした。そこで、現在国内で運行している各新幹線が開業した際、地域に与えた影響の事例を調査した。また、北陸の各自治体は、北陸新幹線開業に向けた目標やこれまでの取り組みなどを発表している。それらに着目しながら、現在以上に正の効果を伸ばし、負の効果を軽減させるための方法を、経済、観光、産業の面から考察した。経済面では、ストロー効果によって「金」を首都圏に取られないよう、観光地としての魅力を高めることが必要である。観光面においては、二次交通を活用すること、温泉街という既存の魅力を高め、滞在型観光を促進することが重要である。また、産業の面では、駅前などの一点に集中せずに、市内を周遊することで、観光客に石川県の多くの地場産業を体験してもらえると考えた。

自転車まちづくりによる地域活性化の可能性−Onomichi U2を事例に(No.27)
 国際観光学部4年 田頭慶祐

 尾道市は「日本遺産」の認定やOnomichi U2のオープンによって観光客増加の可能性があるにもかかわらず、市内には活気がなく、衰退する可能性の方が高い状況にある。そこで、本研究ではOnomichi U2がどのような役割を担い、地域活性化に貢献できるかについて考えることを目的とし、尾道市の現状や総合計画から課題を明らかにし、他地域の事例を参考に提案を考えた。その結果、Onomichi U2は尾道市の地域活性化に原動力となるのではないかと考えた。尾道市、Onomichi U2、尾道市全体のそれぞれ取り組むべきこととして、サイクリスト応援キャンペーン、Onomichi U2オリジナルサイクリングマップの作成、Onomichi U2主催サイクリングツアー、尾道市民をサイクリストにするための行政からのサポート、コミュニティサイクルの導入、インフラの整備を提案した。これらを通して、尾道市の新たなブランド「サイクリングのまち」を定着させる必要があることを指摘した。

岸和田市の魅力のPRによる観光客の誘致(No.28)
 国際観光学部4年 長坂恵

 大阪府岸和田市はだんじり祭りが有名な町である。岸和田市を訪れる観光客の約6割がだんじり祭りが目的である。そのため、観光客が祭り開催日に集中しており、年間の観光客数が安定していない。本研究では、だんじり祭りとともに、岸和田市の今ある観光資源の魅力を向上させる可能性を検討することを目的とする。岸和田市で取り組まれている計画から、岸和田市はだんじり祭りが「荒々しい祭り」と認識されていること、歴史と伝統を持つ文化的遺産があまり知られていないこと、よく知られた特産品や土産物がないこと、情報発信が不十分であることが課題であるとわかった。そこで、だんじり祭りのイメージの変革のためにだんじり会館を活用すること、土産物をPRし定着を図ること、イメージキャラクターを活用し、岸和田市の魅力をPRすること、関西空港に近いという地域特性を活かし、外国人観光客を視野に入れることを提案した。

お土産を活用した地域活性化の可能性−奈良県を事例に(No.29)
 国際観光学部4年 奥政嘉

 JTB「たびQ」アンケートによると、多くの人がお土産に関心を持っているという調査結果があることから、その大きい市場を活用すれば、地域活性化につながるのではないかと考えた。奈良県の現状を調査した結果、閑散期と繁忙期では観光客数に大きな差があり、また特産物や伝統工芸を利用したお土産があるものの、多くの人に認知されてないという課題が明らかになった。そこで、閑散期に奈良の伝統工芸品の製作体験や特産品の収穫体験を行うことにより、既存のお土産に付加価値を付けることができ、閑散期にも安定した観光客の来県が期待できると考えた。また、旅館や宿泊施設のお着き菓子、SNSを活用した情報発信、観光地周辺のお土産店に独自性のあるお土産の配置、大型お土産店の設置などを実施し、認知度向上を図ることができる。その結果、奈良県が持つ課題を解決し、お土産が売れることにより、地域活性化の可能性につながる可能性を示した。

地域資源を活かした訪日外国人誘致の可能性−三重県志摩市を事例に(No.30)
 国際観光学部4年 谷下一史

 本研究では、三重県志摩市賢島で行われるサミットで、地域資源を活かした取り組みを行うことで地域活性化を促し、志摩市に訪日外国人を誘致することを目的とした。志摩市の現状を調査した結果、志摩市の課題として地域力の低下や伊勢神宮に依存した観光形態であること、自然や文化を活かした事業があまりできていないこと、豊富な特産物があるのにもかかわらずそれを活かしきれていないこと、訪日外国人の受け入れ態勢が弱いことが明らかとなった。これらの課題を解決するために、北海道洞爺湖サミットや九州沖縄サミットの事例研究を行い、サミットを契機としたPR効果の活用や開催地の自然や文化を活かした事業の推進、食を活用した観光事業の推進、訪日外国人に対しての受け入れ態勢の整備などを図ることで志摩市の課題を解決し、訪日外国人を誘致できるのではないかと考えた。

テーマパークを活用した観光まちづくりの可能性−大型テーマパークと中規模テーマパークを事例に(No.31)
 国際観光学部4年 菅野樹彦

 本論文では、観光地としてテーマパークと周辺地域が注目されている現状を踏まえ、テーマパークを活用した観光まちづくりの可能性を明らかにすることを目的に、大型テーマパークおよび中規模テーマパークを事例に研究を進めてきた。はじめに、観光まちづくりとは何かを理解するために文献調査を行い、観光まちづくりの概念について整理した。文献調査の結果を踏まえ、大型テーマパークとしてUSJ、TDRとその周辺地域、中規模テーマパークとしてサンリオピューロランド、ハーモニーランド、キッザニアの現地調査を実施した。調査結果として、大型テーマパークはテーマパーク自体を単体と捉えているため、テーマパークを活用した観光まちづくりは極めて難しいと考えた。一方で、中規模テーマパークは自治体と連携したイベントが実施され、それらを通した地域活性化の取り組みが図られていることから、観光まちづくりの可能性があることを明らかにした。

奥河内における観光を使った地域活性化の可能性(No.32)
 国際観光学部4年 野崎楓

 河内長野市を中心とする山麓エリアには、「ちかくて、ふかい」をキャッチフレーズにした奥河内という地域がある。奥河内は高野山に行く途中にあるが、登山の格好をした人はほとんど下車していない。奥河内には特に目立った観光資源はないが、緑豊かな自然に恵まれた土地と6件の国宝、77件の重要文化財という歴史資源がある。これらを活用することで、奥河内を多くの人びとに知ってもらうことができるかもしれない、あるいは他にもまだ見つけられていない観光資源があるかもしれないと考えた。そこで本研究では、奥河内の知名度向上と観光客が訪れる地域にすることを目的に、高野街道まつりへの参与観察や先行研究、事例研究をもとに分析を行った。その結果、奥河内の知名度を上げ、観光客が訪れる地域にするには、着地型旅行の推進と食によるまちおこし、観光ボランティアの活用、既存の観光資源を活用した魅力向上が必要であることを明らかにした。

宿泊者数増加に向けた旅館の活性化−島根県出雲市を事例に(No.33)
 国際観光学部4年 井上さやか

 本研究は、高速道路や新幹線の整備が進んだことにより、かつては宿泊しなければ行くことができなかった観光地への日帰り旅行が可能になったことなどを背景に、日帰り旅行者が増えつつある近年の旅行形態に対し、筆者の地元である島根県出雲市を事例に、旅館そのものの魅力を向上させることで、宿泊客が増加できるのかどうかを目的としている。旅館事業で成功している星野リゾート、湯快リゾートをケーススタディとしてあげ、2つの事業のメリット・デメリットを検討したほか、事例研究も行った。その上で、「個宿」に着目し、星野リゾートが取り組んだ「のれそれ青森」を参考に、出雲市の旅館にしかできない「だんだん出雲」を提案した。研究の結果、旅館が持つそのものの魅力を持続し、旅館の内側の魅力を向上させること、それに加え、出雲市の旅館にしかできない「おもてなし」や「ホスピタリティ」を高めることにより、宿泊客の増加が期待できることを明らかにした。

竹田城と朝来市の魅力あるまちづくり−朝来市城下町を事例に(No.34)
 国際観光学部4年 花岡志保

 朝来市には、竹田城や生野銀山、よふど温泉、茶すり山古墳などの観光資源があるが、その中でも竹田城はメディアやインターネットで紹介されたことから、飛躍的に観光客数が伸びている。しかし、竹田城の観光地化によって抱えている問題があること、2014年まで上昇していた観光客数が減少に転じている傾向にあることがわかった。本論文では、一過性ではなく、持続可能な城下町づくりを地域住民と協力して行うことを目的とし、観光地化により竹田城が抱える問題を解決するために、地域活力再生計画について研究を進めた。その結果、地域活力再生計画を推進することで、減少に転じた観光客数の回復、豊富な観光資源を利用した城下町への観光客の誘致が可能であることを示した。そして、竹田城だけでなく、朝来市全体の活性化のために、地域住民と協力して行うチャレンジショップ事業や体験住宅などの提案を行った。

地域おこし協力隊の活動と定住者増加の可能性(No.35)
 国際観光学部4年 磯野晃

 本研究は、地域おこし協力隊が制度化されてから6年が経過したが、隊員たちが現地で活動を行っている中、この制度が地域に活気を与え、地域の問題を解決し、定住者増加に貢献できているか明らかにすることを目的とした。地域おこし協力隊が制度化されてから4年後には移住者が2.9倍、5,000人以上に増加していることがわかった。評価の視点として、「地域をPRして地域外の人びとが移住を考えるような活動を行っているのか」、「地域外の人びとが地域の人びとと交流し、移住後の生活面の不安を取り除いているのか」、「定住して生活していくために必要な仕事を確立しているのか」、「専門的な職種の人も定住し、生活できる環境を整えているのか」の4つを設定した上で、3つの地域事例を調査し、定住者獲得のための方策を考察した。その結果、異なる地域おこし協力隊同士が活動内容の成功例、失敗例などを情報共有することによって、今後有益な活動を行えるのではないかと考えた。

地域ブランドに対する地域住民の誇りや愛着の醸成の可能性−新潟県小千谷市を事例に(No.36)
 国際観光学部4年 谷口真帆

 本研究は、新潟県小千谷市を事例に、地域住民と地域ブランドの関係性の現状と課題を明らかにすることを目的とした。小千谷市には、ユネスコ無形文化遺産に登録されている「小千谷縮」があるが、地域住民が日常生活で目にする機会が少なく、身近なものではないことから、「織物産業のまち」というイメージを持ちにくいという課題を明らかにした。そこで、小布施町や伊丹市、アムステルダムの事例を調査し、地域住民向けのプロモーション活動やパブリックスペースを活用して地域ブランドを再認識する機会が日常的につくられていたことから、小千谷市でも自分の住むまちの地域ブランドがどのようなものか知ってもらう機会が必要であると考えた。地域ブランドに対する理解が深まることにより、地域への誇りや愛着(シビックプライド)の醸成にもつながる。それにより、地域住民が日常的に「織物産業のまち」を感じることのできるまちづくりが実現し、地場産業や地域振興の発展につながると結論づけた。