新しいライフスタイルを可能にする観光-観光計画論&観光実習1(国内)

国際観光学部准教授 堀内史朗

 観光という言葉は、「休みの日に実施する娯楽活動」という印象を与えます。このような観光像が確立したのは、実はわりと最近のことです。土日・祝日・長期休暇などの休日を設けて余暇活動を楽しみ、それ以外の平日を労働ないし学習時間とする。「近代」という時代の都合の中で、観光は余暇を費やすための役割を与えられてきました。
 しかし人類5万年の歴史において、観光は「今いる場所から別の場所へ移動し、そこで経験をして、自身の糧にする」という機能を持っていました。この機能のおかげで、文明の進化が可能になりました。そして今、私たちのライフスタイルは変わりつつあり、観光も新しい役割を果たすことが期待されます。
 私が担当している授業「観光計画論」では、グローバリゼーションが進む一方で人口減少が進む日本の地方の現状を紹介しながら、観光が地域課題の解決に果たす可能性を紹介しています。観光客との交流を通して、獣害、伝統芸能の継承者不足、空き家問題などの課題解決に成功した事例を紹介しています。また、同じく私が担当している授業「観光実習1(国内)」では、課題解決に資する観光の可能性を、1年間の実習を通して具体的な事例をもとに、学生たちと一緒に考えていきます。その成果を学会大会などで発表しています。
 現在、新型コロナウイルス感染症のためにリモートワークが推奨されるようになり、オンラインで仕事ができる環境が揃い、必ずしも都会に住む必要がなくなっています。田舎暮らしのために転居や転職をする人が増えるかもしれません。その前段階としてのお試し移住や職場体験も、広い意味で観光と呼べるものです。グローバリゼーション、人口減少、そして新型コロナウイルス感染症など、それぞれの時代に適応した新しい観光がつくられていくべきです。このように観光の可能性をより広く考えていくことを私たちは目的にしています。

※関連記事