第5回卒業研究発表会を開催しました
4年生は卒業研究を、3年生はゼミ活動の成果を発表しました
2月6日(火)、森重ゼミ2~4年生の43名が出席し、第5回森重ゼミ・卒業研究発表会を開催しました。このゼミでは、卒業研究を大学での4年間の学びの集大成と位置づけ、卒業研究を通して社会的課題の発見や論理的思考、自身が考えたことを的確に人に伝えるプレゼンテーションの能力の醸成をめざしています。そして、その成果を発表する場として、卒業研究発表会を開催しています。毎年、4年生は論文執筆に苦労するのですが、今年度も例外ではなく、1月末まで加筆修正を繰り返し、卒業研究に向き合ってきました。
今年度の卒業研究発表会では、4年生14名がさまざまなテーマで発表、質疑応答を行った後、3年生が大分県宇佐市で実施したゼミ研究の成果「SNSを活用した地域の魅力発信と回遊性向上の可能性-大分県宇佐市を事例に」を発表しました。終了後の4年生には安堵の表情が見られ、その後2年生が企画した懇親会が行われました。
以下で、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)
今年度の卒業研究発表会では、4年生14名がさまざまなテーマで発表、質疑応答を行った後、3年生が大分県宇佐市で実施したゼミ研究の成果「SNSを活用した地域の魅力発信と回遊性向上の可能性-大分県宇佐市を事例に」を発表しました。終了後の4年生には安堵の表情が見られ、その後2年生が企画した懇親会が行われました。
以下で、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)
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卒業研究のテーマおよび要旨
芸術祭会期外の地域のあるべき姿-瀬戸内国際芸術祭を事例に(No.51)
国際観光学部4年 寺田收孝
本研究では、瀬戸内国際芸術祭の会期外の開催地の現状を明らかにし、会期中との観光客数の格差を是正するための会期外のあり方を検討することを目的とした。まず、文献調査によって芸術祭について明らかにし、香川県、岡山県の観光の現状を調査した。次に、瀬戸内国際芸術祭の開催地の現状分析のため、島々や高松港周辺の現地調査、ボランティアサポーターこえび隊の活動調査を実施した。調査の結果、瀬戸内国際芸術祭の会期外の開催地の課題として、芸術祭事務局主催のイベントの少なさ、各地域で開催しているイベントの知名度の低さ、島々の観光客数の格差、豊島が抱える課題の早期解決の必要性を指摘した。課題を解決するために、先行事例として「大地の芸術祭」、「あいちトリエンナーレ」、「中之条ビエンナーレ」、「ベネッセアートサイト直島」の4例を取り上げた。研究の結果、瀬戸内国際芸術祭の会期外の取り組みとして、?常時開催できる施設を構え、期間を分けた小規模な芸術祭を開催すること、?地域の特産とアートを融合したイベントを開催すること、?島々の観光客数の格差緩和のため、中讃、西讃地域に企業を誘致して事業を展開すること、?太陽光発電所計画について島民と話し合い、住みやすい環境を早急に整えることの4点が必要であることを明らかにした。
ブンデスリーガからみえるJリーグ低迷脱却の可能性(No.52)
国際観光学部4年 隅田光佐
近年、日本代表のサッカーは高い人気を誇る一方、Jリーグの低迷が指摘されている。そこで本研究では、Jリーグの低迷要因を明らかにし、Jリーグに今後どのような要素が必要かを検討することを目的とした。まず、Jリーグ誕生の歴史からJリーグの開設理念を整理するとともに、現在Jリーグが行っているさまざまな活動を調査した。そして、先行事例としてドイツ「ブンデスリーガ」のe.Vの会員制度や経営形態を取り上げた。その結果、地域住民がクラブの経営に直接関わることのできるe.Vの会長選挙や、スタジアム内外での活動が優れていることを明らかにした。今後、Jリーグの低迷脱却に向けて、「サッカーファン以外のための地域密着」に変える手段として、サッカーに興味のない人が少しでもスタジアムへ足を運ぶような仕組みづくりや、スタジアム自体の所有権の有無、試合日以外でのスタジアムの有効な活用が必要であることを明らかにした。
長野県小谷村のふるさと納税の評価と地域活性化の可能性(No.53)
国際観光学部4年 栗田真衣
ふるさと納税は寄付者および寄付額が年々増加している。そこで本研究では、長野県小谷村のふるさと納税の取り組みを評価するとともに、ふるさと納税を活用した地域活性化の可能性を明らかにすることを目的とした。まず、小谷村役場で小谷村およびふるさと納税の現状について聞き取り調査を実施した。次に、自治体と寄付者が交流できるふるさと納税のイベントで聞き取り調査を行い、ふるさと納税の成功基準を検討した。そして、課題を解決するために、先行事例として北海道東川町と長崎県平戸市の事例を取り上げた。研究の結果、小谷村のふるさと納税を活用した地域活性化の可能性として、?ふるさと納税イベントへの参加、?寄付者に共感を得る取り組み、?企業を活用した取り組みの3点が必要であることを明らかにした。
「食」の地域ブランドの秘めるまちおこしの可能性-茨城県県北地域を事例として(No.54)
国際観光学部4年 仲田玉徳
観光において「食」は欠かせない要素であり、さまざまな観光資源やレジャー活動との連携が容易であるため、まちおこしの手段として取り入れられることが多い。そこで本研究では、豊富な特産品があるにもかかわらず、地域ブランド調査2016年魅力度47都道府県ランキングで4年連続ワースト1位になっている茨城県を事例に、「食」の地域ブランドを主体とした地域発展の可能性を研究することを目的とした。まず、文献調査で食による観光の概念と茨城県県北地域の観光の現状を明らかにし、県北地域が抱えている課題と食による観光の効果を比較し、3点の課題を抽出した。そして、先進事例として栃木県宇都宮市、大分県大山町を取り上げた。先進事例が行った取り組みを茨城県県北地域に当てはめることで、県北地域の「常陸秋そば」を中心的な地域ブランドとして確立させることで、持続的な魅力向上が見込めること、「県北地域ビジネス創出支援事業」により、地域のリーダーを担う人材が確立され、地域住民の特産品への認識が高まること、地域ブランドを絞り、地域住民一人一人が地域の魅力に気づくことが今後のPR活動の推進につながることを明らかにした。
鉄道における遅延減少に関する研究-阪和線を事例に(No.55)
国際観光学部4年 佐々木麻希
JR阪和線は大阪と和歌山を結ぶ主要路線であるが、頻繁に運転見合わせや遅延が発生している。そこで本研究では、大阪府内ならびに阪和線の現状や遅延の特性を明らかにし、阪和線を例に鉄道の遅延減少のためには、どのような対策が必要か検討することを目的とした。まず、文献調査によって遅延の定義や遅延が発生する原因、阪和線の概要を明らかにした。次に、阪和線の遅延の特性を明らかにするため、大阪府内で発生した遅延の現状と比較した。その上で、東日本旅客鉄道、東京メトロ副都心線、モスクワ地下鉄、JR新小岩駅、JR山手線、輸送障害時における駅案内放送の改善へ向けた取り組みの6つの例を取り上げた。研究の結果、?新型車両の投入、?直通運転による遅延発生への対策、?ホームドアの設置、?利用者意識の向上が必要であることを明らかにした。
インバウンド観光客誘致の成功要因についての研究-徳島県三好市を事例に(No.56)
国際観光学部4年 西内拓史
インバウンド観光客が増加する中で、地方でもインバウンド観光客を誘致する取り組みが行われている。本研究では、インバウンド観光客の誘致に成功した徳島県三好市がどのような取り組みを行ったかについて明らかにし、日本各地の地域おこしのヒントを模索することを目的とした。三好市では、世界各地を訪れ、各国のインバウンド観光客が求めているニーズを察知し、三好市の観光資源を求めている国に向けて積極的にPRしていることが明らかとなった。また、インバウンド観光客が増えた後に発生した宿泊施設不足の問題に対し、地域住民と協力し、古民家や空き家を利用することで、問題を解決していることがわかった。このことから、インバウンド観光客を誘致する際の効果的なPR方法や地域住民の協力を得る必要性を明らかにした。
ゆるキャラが地域にもたらす影響力-奈良県橿原市を事例に(No.57)
国際観光学部4年 森川奈央
ゆるキャラの目的は「地域のPR効果」と言われているが、その存在はキャラクターとしての役割だけではなく、活躍の幅を広げている。ゆるキャラがどのような形で地域活性化にかかわっているのか明らかにするとともに、ゆるキャラによる地域活性化を成功させたくまモンの活動やプロジェクトを事例に、ゆるキャラを活用して橿原市の観光に関する課題を解決する可能性を考えた。まず、奈良県の概要と橿原市の現状を調査した。その後、橿原市役所を訪れ、橿原市の観光PRキャラクターである「こだいちゃん」と「さららちゃん」の活動内容や観光PRキャラクターのあり方について聞き取り調査を行った。その結果、橿原市が抱える課題として、奈良市に比べて観光客数が少ないこと、宿泊客数が伸び悩んでいることを明らかにした。次に、先行研究や成功事例から、?他県で活動し、認知度を上げるPRをする、?SNSを使うことで橿原市のPRする、?外国人観光客を増やす取り組みが必要であることを明らかにした。
「平成の薩長土肥同盟」の広域連携としての評価(No.58)
国際観光学部4年 三谷悠子
2018年が明治維新150周年になるにあたり、山口県・高知県・佐賀県・鹿児島県の4県では、広域観光プロジェクト「平成の薩長土肥同盟」を行っている。いずれの県でも歴史的観光資源を使い、各県の歴史資源に興味を持ってもらうことで、観光客を増やそうと取り組んでいる。本研究では、広域観光の定義を踏まえた上で、4県それぞれが行っている取り組みを調べ、平成の薩長土肥同盟がうまくいっているかどうか検討した。その結果、各県内で行われているイベントは長期で開催されているにもかかわらず、4県全体の観光客数を見れば大幅な増加がないこと、また4県を行き来するための交通の便が少ないことが課題としてあげられた。課題解決に向けて、先行事例として四国デスティネーションキャンペーンと北東北連携事業を取り上げた。その結果、平成の薩長土肥同盟がうまくいくためには、各県が体験型のイベントを増やすこと、インフラ整備の一環として交通機関の割引切符を導入することが必要であることを明らかにした。
ロックフェスティバルを用いた地域活性化の可能性-MONSTER baSHを事例に(No.59)
国際観光学部4年 小林廉
現在、ロックフェスティバルは全国各地で数多く開催されている。大規模なロックフェスティバルになると強い集客力を持っている。香川県では、2000年から「MONSTER baSH」が開催されている。本研究では、MONSTER baSHの現状を明らかにし、地域と結びつけることで参加者が開催地に興味を持ち、観光振興につなげることができるかどうか検討することを目的とした。そこで、ロックフェスティバルの概要と香川県の観光の現状、MONSTER bashの現状を分析するために文献調査を行った。調査の結果、MONSTER baSHの課題として、参加者に対するツアープランがすべて直行直帰型であることを指摘した。課題を解決するために、先進事例として、阿蘇ロックフェスティバル、イナズマロックフェス、加賀温泉郷フェス、FUJI ROCK FESTIVALの4例を取り上げた。その結果、?宿泊を伴うロックフェスティバルへの参加を促すイベントの企画、?ウェブサイトでのイベント情報の発信、?地域と連携したロックフェスティバルづくりを行うことが必要であることを明らかにした。
市民参加型の都市公園の魅力向上に関する研究-なんばパークスガーデンを事例に(No.60)
国際観光学部4年 梶原奈津希
現在、都市公園と呼ばれる公園は日本に約11万箇所ある。その中で、都市公園にはどのような魅力があるのか。本研究では、なんばパークスガーデンを事例に、都市公園が魅力あるものとして機能しているのか調査することを目的とした。現状分析のために、なんばパークスガーデンのガイドツアーの参与観察と、なんばパークスガーデン事務局への聞き取り調査を実施した。その上で、日比谷公園、大阪マルビル、毛利庭園の3つの先行事例を取り上げた。研究の結果、なんばパークスガーデンは平日に利用者の満足が高められるようなイベントを行うこと、人と生きものにとって自然豊かで癒しの空間を提供することで、今後さらになんばパークスガーデンの魅力が向上できることを明らかにした。
新規テーマパークが抱える課題と今後の可能性-レゴランドを事例に(No.61)
国際観光学部4年 山田奈緒子
本研究は、当初予想に反して入場者が集まっていないレゴランドの現状を明らかにし、現状を打破するために今までのテーマパークや危機を乗り越えたテーマパークの成功事例をもとに、これからのレゴランドのあり方について考えることを目的とした。まず、テーマパークの概念を明らかにするとともに、日本の観光の現状と愛知県の観光の現状を調査した。次に、レゴランドの料金設定やコンテンツ、設備などについて調査した。これらの結果、レゴランドの課題として、?コンテンツの魅力不足によるリピーターの少なさ、?世間からの悪評とターゲットの狭さの2点を指摘した。課題を解決するために、先行事例としてユニバーサル・スタジオ・ジャパン、東京ディズニーランド、ひらかたパーク、長崎ハウステンボスの4例を取り上げた。その上で、レゴランドが日本を代表するテーマパークになるために、?消費者視点によるコンテンツの魅力向上、?意外性のある話題づくりによる悪評の払拭、?テーマパークへの再投資によるリピーター獲得の3点が必要であることを明らかにした。
奈良県におけるリニアモーターカー新駅設置による地域活性化の可能性(No.62)
国際観光学部4年 小田建斗
奈良県では、リニア中央新幹線の中間駅誘致に奈良、生駒、大和郡山の各市が力を入れており、より高い経済効果の創出が期待されている。本研究では、奈良県の地域活性化の手段として、リニア中央新幹線が開業した際の波及効果を県全域にもたらすために、どのような要素が必要か検討することを目的とした。調査は文献調査で、リニア中央新幹線の現状と奈良県の観光の現状について明らかにした。先進事例として、富山県における北陸新幹線開業によるストロー効果に対する取り組み、青森県八戸市の地域交通を利用した観光開発、北陸新幹線金沢駅周辺の魅力度向上と石川県のメディア戦略、富士山静岡空港の周辺地域にもたらす経済効果の4例を取り上げた。そして、リニア中央新幹線の波及効果を活用した地域活性化実現に向けて、?奈良県の観光客に対しての受け地づくり、?地域独自の資源のブランド化、?魅力向上に向けたPR戦略による奈良県の開業効果に対しての対策が必要であることを明らかにした。
日本とタイのタクシーサービスに関する比較研究(No.63)
国際観光学部4年 若林佳代
本研究では、日本とタイのタクシーサービスを比較し、タイのタクシーサービスの改善方法を検討することを目的とした。まず、タイのタクシーサービスの現状から問題点を調査し、?乗車拒否、?ドライバーが道を知らないまま乗務すること、?メーターの違法改造などを指摘した。このような問題の解決策として、タイのタクシーサービスと問題点が類似し、「日本流タクシー」を導入したことにより成功したフィリピンのタクシーサービスを例に、その要因を検討した。また、タイを訪れる外国人観光客が安心するサービス、求めるサービスは何かを明らかにし、タイのタクシーサービスの改善やサービス向上の方法を検討した。その結果、?タクシードライバーに対するルールの徹底、?地理研修の導入、?メーターの違法改造への対策が必要であることを明らかにした。
持続可能な世界遺産登録地域の実現に向けた取り組み-小笠原諸島を事例に(No.64)
国際観光学部4年 小路健太
現在、世界には1,052件の世界遺産があり、そのうち日本には21件が登録されている。世界遺産に登録されると、観光客が急増し、経済発展や移住者の増加なども見込まれてくる。一方、観光客が増加することで、生態系が崩れることや自然景観の破壊などの課題も生じてくる。そこで、世界遺産の定義を踏まえた上で、登録後の地域の現状を調査し、世界遺産の目的と世界遺産登録後の観光地の課題を比較した結果、両者が合致していないことがわかった。そこで、世界遺産登録後の問題を解決するために、本研究は観光客の増加による持続可能な世界遺産登録地域の実現に向けた取り組み方法を検討することを目的とした。先行事例として小笠原諸島を取り上げ、世界遺産登録後の生態系と産業の持続可能性を保つため、エコツーリズムを通じた利用制限、自主ルール、生態系の保護の3つの成功要因を抽出した。そして、屋久島も同様にエコツーリズムに取り組んでいるが、地域住民のかかわり方の違いが明らかになった。このことから、地域住民と旅行業者の関係性を構築し、遠隔な自主ルールや保全方法を生み出すことが、保全と利用のバランスを保つ持続可能な世界遺産登録地域につながることを明らかにした。