第12回卒業研究発表会を開催しました
4年間の大学での学びの集大成となる研究成果を発表しました
2月1日(土)、森重ゼミ2~4年生の24名が出席し、第12回卒業研究発表会を開催しました。このゼミでは、論理的思考の習得を目標の1つに掲げており、ゼミ生は4年次にほぼ1年間をかけて20,000字の卒業研究に取り組みます。3年次にゼミ生全員で取り組んだフィールドワークの経験を活かし、ゼミ生それぞれが研究テーマを設定し、現状整理から課題の設定、調査、分析、考察、結論に至るプロセスを論理的にまとめていきます。論理的思考とそれらを文章で表現するということは容易ではなく、例年と同様ゼミ生が苦労を重ねながら卒業研究をまとめていきました。
今回は、昨年4月にキャンパスを移転したことから、初めて本キャンパスでの卒業研究発表会となりました。4年生はこの発表をもって卒業研究が終了することから、発表の緊張感とゴールが見えたことの安堵感が入り混じる発表となりました。4年生の卒業研究発表の後、北海道網走市でフィールドワークを実施した3年生が「網走市における若年層の認知度向上のためのSNS活用方法」について発表しました。
以下では、今年度卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)
今回は、昨年4月にキャンパスを移転したことから、初めて本キャンパスでの卒業研究発表会となりました。4年生はこの発表をもって卒業研究が終了することから、発表の緊張感とゴールが見えたことの安堵感が入り混じる発表となりました。4年生の卒業研究発表の後、北海道網走市でフィールドワークを実施した3年生が「網走市における若年層の認知度向上のためのSNS活用方法」について発表しました。
以下では、今年度卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)
当日の様子
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卒業研究のテーマおよび要旨
姫路セントラルパークの認知度向上の可能性(No.143)
国際観光学部4年 藤井励
姫路セントラルパークには他の遊園地・テーマパークと同じような施設が存在し、何ら遜色がないと思われるが、集客数は必ずしも多くない。かつては自虐的なPRを行い、集客数が50~60万人に増加した時期もあったが、関西圏の人びとへのアンケート調査によると、姫路セントラルパークで何ができるかわからないという回答者が過半数を占めていた。このことから、姫路セントラルパークの認知度が低いことを課題として取り上げた。そこで、比較する成功事例として、志摩スペイン村とひらかたパークに着目した。2つのパークを調査した結果、志摩スペイン村については、V Tuberが第三者的な立場から遊園地の魅力を伝え、その魅力を拡散できたこと、ひらかたパークについては、遊園地やテーマパークに興味がない顧客であっても、コラボレーションしたアニメが好きな顧客が訪れるコンテンツを導入したことが、集客の増加につながった要因であると分析した。この分析結果から、姫路セントラルパークにおいても、関西圏で有名なYouTuberやV Tuberを通じたSNSの発信や顧客の年代に合わせたアニメコンテンツを取り入れた認知度向上策を提案した。
プロ野球の観客動員数の増加に寄与する要因分析と今後の展望(No.144)
国際観光学部4年 牧宏興
本研究は、プロ野球をスポーツツーリズムの一側面として捉え、プロ野球の人気維持や観客動員数の増加、パ・リーグの人気向上に必要な取り組みを明らかにすることを目的とした。2リーグ制が創設された当初の観客動員数、近年の観客動員数、他のスポーツの観客動員数などの現状を明らかにし、野球自体の人気も高めていく、あるいは継続していくためにはどのような取り組みが必要になるのかを以下で調査していくことを課題に設定した。そして、観客動員数を大きく伸ばしたエスコンフィールド北海道の事例を調査した結果、観客動員数の増加に寄与する要因として「周辺施設」、「脱日常性」、「エンターテイメント性の強化」の3点が重要であることが示した。また、「脱日常性」と「エンターテイメント性の強化」に対応する具体的な施策を提示した。具体的には、野球観戦以外の動機で訪れる人も含めた観戦者の多様なニーズに応えるために、周辺施設の整備や日常的な取り組みが必要であることを明らかにした。これにより、多様な観戦者の期待に応える施策が、プロ野球に新たな活力をもたらすと考えられる。
タトゥーを入れている温泉施設利用者に対する理解と対策-異文化理解の視点を踏まえて(No.145)
国際観光学部4年 西村虎流
本研究は外国人観光客が増加する中で、異文化理解の視点から入浴施設が今後行っていくべき対策を提案することを目的とした。現状から、日本で入れ墨やタトゥーが社会的に十分受け入れられていないのは、タトゥーに対する過去のマイナスのイメージが現代においても残っていることが原因であった。また、海外と比べると、日本以外のすべての国でタトゥー文化が浸透しているわけではなく、歴史的背景や寛容度が日本と似ている国もあった。一方、日本の入浴施設ではタトゥーに関する苦情はあるものの、実際にトラブルが発生した施設はほとんどなかった。これらのことから、タトゥーが受け入れられない一番の要因は人びとがタトゥーに対して持つ印象であると考えた。そこで、年代別にタトゥーの印象に関するアンケート調査を行った。その結果、日本人がタトゥーに対して最も問題視している点は「柄」であることがわかった。また、タトゥーの印象については、結果に差はあるものの、どの年代でもタトゥーへの印象は悪いことが明らかになった。しかし、年代によって重視している点が異なり、それはタトゥーの「印象」によるものであることを分析した。これらを踏まえた上で、入浴施設における異文化理解に向けて、柄や大きさによってタトゥーを規制あるいは容認する対策を提案した。
友ヶ島を含む加太エリアの魅力度向上に向けて(No.146)
国際観光学部4年 福田壮吾
本研究は、和歌山市加太地域の友ヶ島を例に、地域資源を活用した地域活性化の取り組みを通して、友ヶ島を含む加太エリアの魅力向上について検討することを目的とした。友ヶ島を含む加太エリアは、「めでたい電車」や淡嶋神社などの観光資源を有しているが、それらの魅力を十分に発揮できていない。和歌山市は和歌山城やマリーナシティだけでなく、周遊を通じた観光客の増加をめざしている。そのためには、加太地域の認知度を高め、友ヶ島を含む加太エリアへの周遊客を増加させる必要があるが、そのための方策が検討されていない。そこで、直島や佐久島、銀山温泉やニセコ地域の取り組み事例を調査した結果、新たな観光資源の創出のためには、よそ者の視点から新たな観光資源を見出し、その価値を地域住民に伝えるとともに、地域住民がよそ者の意見を取り入れ、資源に働きかけることが必要であることを明らかにした。その際に、地域住民だけでは観光資源を創出できない場合、よそ者や和歌山市の行政のサポートによって、新たな観光資源の創出が可能であることを指摘した。これらを踏まえ、友ヶ島の魅力向上に向けて、サマータイムレンダの聖地巡礼マップなどの事業の継続、周辺観光地との連携の強化などを提案した。
堺市の東西交通軸の実現に向けたイベント活用による需要創出の可能性-海の京都のイベント活用を事例に(No.147)
国際観光学部4年 堀洋範
本研究は堺市の東西交通軸が実現されない理由を明らかにし、その課題に対する提案を目的としている。堺市の現状を調査したところ、堺市はめざすべき都市像として「未来を創るイノベーティブ都市」を掲げ、「移動利便性の向上」、「道路・交通空間の人への開放」、「ゼロカーボンシティの先導」が必要と考えている。堺市では過去に東西交通について多くの議論がなされてきたが、需要が小さいことなどの理由からいまだ実現していない。そこで、実現に向けてどのような取り組みが必要か検討することとした。京都丹後鉄道の事例から、イベントによって需要が増加していることを示した。その中でも、大丹鉄まつりは地域の人びとの京都丹後鉄道の認知度を高める効果、またある程度長い期間開催された海の京都博は、地域外の観光客に地域の魅力を伝える効果があることを明らかにした。そこで、堺市においても、東西交通の開通記念イベントの開催や、海の京都博のようにこれまで開催されてきたイベントと新たなイベントの融合を図ることで、東西交通の需要を喚起する可能性があることを明らかにした。
東京ディズニーランドの成功要因は他のテーマパークに当てはめることができるのか(No.148)
国際観光学部4年 山田雅也
本研究は、東京ディズニーランドのリピート率の成功要因を明らかにした上で、これらの成功要因を他のテーマパークに適用できるか検討することを目的とした。はじめに、先行研究を整理した後、「立地条件の良さ」、ディズニーランドの世界にふさわしいアトラクションといった「テーマ性」、「地元住民や行政の協力」、接客従業員のホスピタリティ・サービスが顧客に対して感動体験を与えるといった「従業員や日本側の熱意」がリピート率につながっていることを示した。次に、東京ディズニーランドの成功要因が他のテーマパークに当てはまるかどうか、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、志摩スペイン村、よみうりランドに適用し、文献調査、来場者への聞き取り調査を実施した。その結果、「テーマ性」、「地元住民や行政の協力」、「従業員や日本側の熱意」は当てはまると考えた。「テーマ性」については、必ずしも世界観を持っていない遊園地でも、テーマ性を持ったイベントなどを取り入れることで当てはまると考えた。一方、「立地条件の良さ」については、駅から遠い立地であっても、移動中のバスの中で音楽をかけたり、キャラクターをラッビングしたりすることで、立地条件を改善できることを指摘した。
地域住民とファンの相互理解による地域問題の解決の可能性-阪神甲子園球場を事例に(No.149)
国際観光学部4年 松本真宏
本研究は、プロ野球の人気球団である阪神タイガースの本拠地がある甲子園球場周辺に住んでいる人びとが迷惑を被っているのではないかと考え、阪神ファンによって発生する問題を解決する方法を検討することを目的とした。まず、阪神タイガースの歴史や阪神ファンに対するイメージ、甲子園球場周辺に住んでいる人びとの意見などの現状を整理した結果、想定していたほど悪いイメージを抱いていないこと、試合当日の交通規制に不満を持っていることを明らかにした。そこで、現在西宮市に住んでいる、もしくは働いている人びとに聞き取り調査を行った結果、必ずしも阪神タイガースファンでなくても勝つと嬉しいなど、ポジティブなイメージを持っていることがわかった。そこで、甲子園球場周辺の住民と阪神ファンの共存に向け、阪神ファンの実態を理解するために交流の機会を設けることや阪神ファンでなくても参加しやすいボランティアを提案した。また、交通問題の不満解消に向けて、現在阪神電鉄が行っている対策に加えて、普通電車を増やしたり、ホームを工夫して分別したりすること、自動車を運転中でも当日の試合の有無を確認できるしくみを提案した。
産業遺産の持続可能な保存・活用方法に関する研究-ヘリテージツーリズムを事例に(No.150)
国際観光学部4年 廣内晴翔
本研究では産業遺構の保存・活用の現状について整理し、歴史と技術を継承し産業遺構の活用につなげることができるヘリテージツアーを持続的に行う方法について調査した。産業遺構の現状を整理する中で、産業遺産の保存には活用が重要であり、遺構が持つ歴史的価値や技術的価値について理解が広まらなければ活用につながらないことを明らかにした。そこで、産業遺産に訪れ、インタープリターを通じ、その地域が持つ歴史や文化、技術を学ぶ「ヘリテージツーリズム」に注目した。ヘリテージツーリズムの現状を調査するために北海道紋別市にある「鴻之舞金山」に訪れ、ヘリテージツアーを続ける上で、高齢化によるインタープリターの減少や産業遺構の維持などの多くの課題があることを明らかにした。そして、長崎県長崎市にある「端島」と北海道赤平市にある「赤平炭鉱ガイダンス施設」を調査地として、課題への対応策について調査した。調査の結果、端島ではARやVRなどの最新技術を用いたデジタル技術による保存を進め、赤平炭鉱では地域とのかかわりや他の産業遺構とのつながりをまとめた「炭鉄港」に参加し、グループによる保存方法を行っていた。デジタル技術による保存方法は多くの資金が必要となるため、導入できる産業遺産は限られる。一方、グループによる保存方法は導入が容易であり、地域とのかかわりや他の産業遺産とのつながりから知名度を上げ、歴史的価値や技術的価値が認められることで、保存につなげることができる。この結果から、グループでの保存方法はこれからヘリテージツアーを継続的に続けていく上で有効であり、産業遺産の保存につながると考えられる。
鉄道赤字路線の存続の可能性-播但線を例に(No.151)
国際観光学部4年 清水隆世
本研究では、鉄道の赤字路線の存続をめぐる課題に対し、兵庫県の播但線を事例に、地域資源としての地方鉄道を残していくために何が必要か検討することを目的とした。日本の鉄道および播但線の現状を整理し、ともに利用者が減少傾向にあることを明らかにした。そして、利用者の維持・増加に成功した地方鉄道の事例を調査した結果、鉄道に対する意識転換・意識醸成を図ることで、利用促進につなげていたことを示した。しかし、調査した事例はいずれも高齢者や高校生を対象とした利用促進策であったため、児童生徒に向けた意識醸成に関する事例を収集・分析し、児童生徒への取り組みが将来の地元に対する意識醸成につながることを明らかにした。
日本人が海外旅行に抱く不安解消の可能性(No.152)
国際観光学部4年 宮本柚人
本研究は、日本人が海外旅行に対して抱く不安を調査し、その具体的な対処法を明らかにして解消をめざすことを目的としている。新型コロナウイルスのパンデミックが終息し、多くの人びとが再び海外旅行に行きたいという意欲を持ち始めているが、未だにさまざまな不安が日本人旅行客の行動を制限している。特に、未知の土地や馴染みのない環境に対する恐怖心や不安感が強く、これが旅行の計画や実行において大きな障壁となっている。これらの不安要因は、旅行前の準備不足や情報不足、言語の壁、現地での医療や治安に対する懸念など多岐にわたる。また、文化や習慣の違いも不安の一因となり得る。これらの不安は旅行の楽しみを減少させるだけでなく、旅行そのものを断念させる原因にもなっている。これらの課題を解消するために、ソーシャルメディア分析およびオンラインアンケート調査を実施した結果、治安や言語の壁に関する不安が依然として大きな課題であることが確認された。一方で、旅行者がそれぞれの不安に対応するために多様な対策を講じ、それによって不安を軽減している実態も明らかとなった。これらの知見をもとに、不安要因の対策法を包括的にまとめたアプリケーションを開発することが、不安の軽減に有効であると考えた。
ケアンズにおけるコロナ禍後の新しい観光の形-サンシャインコーストの観光戦略を事例に(No.153)
国際観光学部4年 藤田雄己
本研究はケアンズを対象とし、観光者がコロナ禍後に観光地に求めるものを明確にし、新しい観光の形を明らかにすることを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、既存の研究にはコロナ禍後のケアンズに対する新しい観光の形を捉えた研究が見られないことを指摘した。次に、ケアンズの概要と観光の現状を整理した。ケアンズを訪れる日本人観光者と欧米人観光者の意識に関する聞き取り調査の結果、日本人観光者はケアンズに対しネガティブな意見であった一方、欧米人観光者はポジティブな意見であった。両観光者の間にケアンズに対する意識の違いが見られた。その理由は日本人観光者の参加するツアーの内容が、欧米人観光者と異なることが明らかになった。そこで、日本人観光者のケアンズに対する意識を変えることを課題とし、サンシャインコーストの観光戦略を事例に成功要因について聞き取り調査を行った結果、SNSを使ったイメージ戦略とスローツーリズムを組み合わせた観光戦略が成功の要因であることを明らかにした。そして、ケアンズもサンシャインコーストの成功要因を参考にすることで課題解決につながると考えた。コロナ禍後の新しい観光の形を立案することで快適な観光が楽しむことができる。
外国人観光客が直面する課題とその解決策-日本旅行をもっと楽しい体験に(No.154)
国際観光学部4年 平山ひな
本研究は、訪日外国人観光客が日本滞在中に直面する課題を明らかにし、観光体験をより良いものにするための提案を行うことを目的とした。現状を整理し、外国人観光客が日本で多くのストレスを感じていることが課題として浮かび上がってきた。これらの課題を解決するため、オンラインプラットフォームと対面調査を通じて具体的な事例を収集し、外国人観光客がどのような困難を経験しているのか調査した。その結果、多言語対応の不足や情報インフラの未整備、文化的ルールの事前説明の欠如が満足度を低下させていることを明らかにし、特に多言語対応や事前情報提供の欠如がストレスを増大させていることを指摘した。その上で、翻訳アプリの普及や多言語対応メニューの導入、Wi-Fi環境の整備、文化的背景を説明するオンラインガイドや体験型ツアーの導入といった具体的な方策を提案した。本研究の提案は、訪日外国人観光客が日本での滞在をより楽しめる環境を構築し、日本全体の観光価値の向上に寄与するものと考えられる。