第10回卒業研究発表会を開催しました
4年生が1年間の卒業研究の成果を、3年生がゼミ研究の成果を発表しました
2月1日(水)、森重ゼミ2~4年生の計35名が参加し、第10回森重ゼミ・卒業研究発表会を開催しました。卒業研究は大学4年間の学びの集大成であることに加え、森重ゼミでは論理的思考の体現の場と位置づけています。ゼミ生にとっては高いハードルですが、先行研究の整理を踏まえて自らテーマを設定し、現状整理、課題の設定、調査、分析、考察を通して、論理的に結論を導くことを求めています。ゼミ生によって進捗状況に差がありましたが、何とか卒業研究を取りまとめることができました。
当日は、4年生13名が研究成果を発表し、活発な質疑応答が見られました。4年生の卒業研究発表に続いて、3年生が「しまなみ海道での滞在型観光に向けて-宿泊施設のPRと新しいサイクリングコースの提案」をテーマに、広島県尾道市のしまなみ海道でのフィールドワークの成果を発表しました。コロナ禍で学年を越えた交流が困難な状況が続いていますが、今回も無事に対面で開催でき、貴重な交流機会にもなりました。
以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)
当日は、4年生13名が研究成果を発表し、活発な質疑応答が見られました。4年生の卒業研究発表に続いて、3年生が「しまなみ海道での滞在型観光に向けて-宿泊施設のPRと新しいサイクリングコースの提案」をテーマに、広島県尾道市のしまなみ海道でのフィールドワークの成果を発表しました。コロナ禍で学年を越えた交流が困難な状況が続いていますが、今回も無事に対面で開催でき、貴重な交流機会にもなりました。
以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)
当日の様子
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卒業研究のテーマおよび要旨
記憶の継承の手段としてのダークツーリズム-国内外のダークツーリズムの捉え方の違い(No.119)
国際観光学部4年 藤原一希
本研究では、ダークツーリズムの観光対象となり得る場所であっても、そのように扱われないことがあることに疑問を抱いたため、「どこがダークツーリズムの観光対象となるのか」を明らかにすることを研究目的とした。先行研究では、ダークツーリズムの意味を模索する研究やダークツーリズムに代わる観光概念に関する研究が行われていたが、ダークツーリズムの対象となり得る場所の違いについての研究は見られなかった。ダークツーリズムの現状を整理すると、さまざまな事例が散見され、混乱が生じていた。その要因として、定義が曖昧になっているのではないかと考えた。そこで、ダークツーリズムの定義や考え方を調べた結果、ダークツーリズムの定義は大きく5つに分類できた。分析と考察の結果、海外の定義では「死や苦しみ」の場所であればすべてがダークツーリズムに当てはまる一方、国内の定義では時間が経過すると薄れる要素も定義に含まれていた。そして、ダークツーリズムの定義として重要な要素は「教訓・記憶の継承」であり、観光を通してリアルな体験が記憶の継承につながることを指摘した。
過度なダイエットを繰り返さないための価値観の変化-健康的なダイエットに向けて」(No.120)
国際観光学部4年 三好夢菜
本研究は、ダイエットに苦しんできた人びとが再びダイエットを行う際に、どのようにすれば過度なダイエットを防ぎ、同じ過ちを繰り返さないのかを検討することを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、不必要なダイエットやメディアによる健康被害のダイエットについて問題点を解決できていないことを指摘した。次に、基本的なダイエットの考え方や歴史、海外とのダイエットの違いについて現状を整理し、ダイエットの悪影響により痩せることへの執着心が強まっていき、日常生活が送れなくなってしまうことに関して、日本人の若い女性がなぜ過度なダイエットを続けるのかを課題とした。そして、過度なダイエットを行った経験のある女性、または友人や周りから過度なダイエットであるといわれたことがある女性を対象としてアンケート調査を実施した。その結果、回答者は痩せすぎていることに気づかず、健康被害を及ぼしていることがわかった。その原因として、見た目を気にしすぎていることと、痩せていることに対する基準が高すぎることを明らかにした。このことから、同じ過ちを繰り返さないように、海外旅行や教育の機会の提供、体型を気にしないための多様なサイズの展開を提案した。
地方でのグルメフェス開催を通したまちおこしの可能性(No.121)
国際観光学部4年 北條百花
本研究は、地方でグルメフェスを開催することによってどのようなまちおこしを実現できるか検討することを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、既存の研究には地方でのグルメフェスの開催とまちおこしを関連づけた研究が見られないことを指摘した。次に、旅の動機とグルメやグルメフェス、まちおこしの現状について整理した。グルメフェスは現在、ほとんどが大都市で開催されていることから、地方でグルメフェスを開催するには、どのような条件が求められているのかを課題に取り上げた。そして、グルメフェスの参加経験の有無にかかわらず100人を対象にアンケート調査を実施した。その結果、「イートインスペースが多い」、「混雑を避ける」、「低価格である」という条件が明らかとなった。このことから、広い場所の確保や自動車でのアクセスのしやすさ、また地方の食材を活用するといった地方の条件を生かすことで、地方でのグルメフェスの開催を通したまちおこしが期待できると考えた。
公共交通機関を活用したペットツーリズムの拡大の可能性(No.122)
国際観光学部4年 東花琳
本研究では、ペット同伴の旅行の現状を把握し、ペットと旅行に行く際に起きる行動制限やペットと利用できる公共交通機関の情報の認知度を明らかにし、解決策を検討することを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、既存の研究では公共交通機関を利用したペットツーリズムの研究が見られないことを指摘した。次に、ペット同伴可能な宿泊施設、ペット連れ旅行商品の現状を整理した。現在、ペット同伴可能な宿泊施設、ペット連れ旅行商品は増加傾向であるが、宿泊施設や移動手段により、ペットのストレスで制限を感じるといった問題がある。そこで、ペットを連れて旅行へ行く際の行動制限やペットを同伴できる公共交通機関の認知度を明らかにするため、ペットの飼育経験がある人を対象にアンケート調査を行った。その結果、「食事に行動制限を感じる」、また「ペットを連れて公共交通機関を利用できることを知らない」と答えた人が多いことが明らかになった。このことから、ペットと同伴できる公共交通機関の情報やペットと円滑に旅行できる情報を発信することにより、ペットを連れて旅行に行く人が増加する可能性を示した。
ドレスツーリズムの実現と普及の可能性(No.123)
国際観光学部4年 尾﨑友紀
本研究は、着物でのまち歩き観光が日常的に行われている一方で、ドレスでのまち歩き観光が普及しない理由を明らかにし、「ドレスツーリズム」の実現に向けた方策を提案することを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、既存研究ではドレスツーリズムが実現していない理由や要因が明らかにされていないことを指摘した。次に、貸衣装とドレス体験の現状を整理し、ドレスツーリズムが抱える課題とウエディングのロケーション撮影やドレスレンタルが抱える課題に類似点が多いと考え、文献調査を行った。また、着物とドレスのレンタルを行っているスタジオに聞き取り調査を行った。さらに、神戸市で開催されているドレス体験で参与観察を行った。その結果、ドレスツーリズムが実現していない大きな要因として、体験費用とドレスの破損の恐れがあげられた。このことから、ドレスツーリズムを実現するには、中古品やリメイク品などを活用することによって低価格で対応することを提案した。また、普及に向けて、ドレス着用のイベントを通した観光客誘致を行うことにより、イベント実施地域にドレスツーリズムを印象づけることができ、体験者が増加すると考えた。
推し活を生かした持続可能な観光客誘致の可能性(No.124)
国際観光学部4年 近藤うらら
本研究では、「推し活」を定義することで、持続可能な観光客誘致につながる可能性を検討することを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、推し活の金銭面や心理について述べられたものがほとんどで、行動面を明らかにした研究は見られなかった。次に、「推し」または「推し活」とは具体的に何を指す用語であるのか、用語が広まった要因なども含め、定義づけを行った。明らかにした定義をもとに、「推し活」の展開として、さらに深く推し活を行う人の心理や、Z世代とはどのようにかかわっているのか明らかにすることで、SNSとのかかわりが深いことが浮き彫りとなった。そこで、誘致方法としてどのSNSが最も効果的であるか、どのように誘致するべきなのかについて、アンケートによる調査やSNS上での調査を実施した。調査の結果、Z世代に向けた誘致方法として、最も効果的なのはSNSであることが分析できたので、最終的にインスタグラムを使用した誘致方法を提案した。
インターネット利用者が多様な情報に触れる機会の確保-フィルターバブルによる情報のパーソナライズ化を事例に(No.125)
国際観光学部4年 林大稀
利用率が9割を超えているインターネットであるが、アルゴリズムによる情報のパーソナライズ化により、利用者は自身の考え方や価値観が孤立する「フィルターバブル」という問題が発生する。フィルターバブルを引き起こしているアルゴリズムは、本来ユーザーにとって便利な機能であるため、本研究ではアルゴリズムを直接変えるのではなく、インターネットを利用するユーザー自身がフィルターバブルの環境下にいることを認識する対策方法を考えた。調査を通して、フィルターバブル自体の認知度が低いことに加え、インターネットを利用した情報収集では多様な情報を得る機会が少ないことがわかった。そこで、フィルターバブルの認知度および多様な情報に触れる機会を増やす方法として、学校でのフィルターバブルに関する教育およびアクティブラーニングの導入、観光による偶有性の体験という3つを提案した。
屋台の魅力を生かした地域活性化(No.126)
国際観光学部4年 松若彩
本研究は、店主とコミュニケーションをとりやすいといった屋台の魅力を生かせれば地域活性化が図られるのではないかと考え、その可能性を検討することを目的とした。まず、実店舗と屋台の違いを明らかにしたうえで、屋台の歴史や海外との屋台の違い、屋台のメリット・デメリットなどを整理した。そこから、屋台の規制をどのようにクリアするのか、どのように集客するのかという課題を設定した。そして、利用者は屋台に何を求めているのか、屋台営業者はどのように考えているのかについて、アンケート調査とインターネットの情報収集を行った。その結果、利用者からは「見たことない屋台」、「客と店主がコミュニケーションを取りやすい屋台」などの意見があがった。また、営業者側は「天候に左右されない屋台営業をしたい」との意見があった。これらのことから、屋台風の実店舗を設置する、実店舗を持つ前のチャレンジとして屋台を営業する、短期間だけ借りる屋台によって、屋台の魅力を生かした地域活性化につながると考えた。
地域内外のつながりを意識したワーケーションの普及の可能性-福井県高浜町まちなか交流館を事例に(No.127)
国際観光学部4年 上林美凪
本研究では、地方においてワーケーションが普及するためにはどうすればよいかを考えることを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、ワーケーションの普及に関する研究が見られないことを指摘した。次に、ワーケーションの定義や生まれた背景、ワーケーションにおける影響や効果を整理した。新型コロナウイルス感染症や働き方改革の影響で、ライフスタイルに変化が出たことにより、ワーケーションは近年注目を集めているものの、和歌山県や長野県など限られた地域でしか浸透していないことを説明した。そこで、筆者が実際に訪れ、興味関心を持った、シェアワークスペース「高浜まちなか交流館」での参与観察やアンケート調査から、施設を中心とした特徴的なワーケーションが行われていたことを明らかにした。その上で、地域の実情がわかる場でのワーケーションの展開や、それらを伝えられるコーディネータの存在が、地域内外のつながりを意識したワーケーションの普及において重要な条件であることがわかった。
断捨離と無駄な消費の関係性-無駄な消費をなくすために(No.128)
国際観光学部4年 吉野光二
これまで断捨離をしてきた筆者は、断捨離をすることによって、消費の無駄もなくすことができる関係性に気づいた。そこで、消費の際に無駄が生まれているケースが多く存在すると考え、それを1つでも減らすために本研究を始めた。現状把握として、無駄や消費社会、資本主義社会などの重要ワードの整理をしたほか、消費者行動論の基礎知識などを調べた。そして、断捨離と消費についての関係性を明らかにした。その上で、実際にミニマリストとして活動している3名の見解から断捨離の具体的な方法を調査した。これらを実践することで無駄な消費をなくすことを明らかにした。
スマートフォンを活用した女性のひとり旅の不安解消(No.129)
国際観光学部4年 油谷もえ
本研究では、女性がひとり旅を安心して楽しむために、どのように自分自身を守れば良いか、その対策について明らかにすることを目的とした。はじめに、先行研究を整理し、女性がひとり旅をする際、自分自身で対策をする側面から捉えた研究が見られないことを指摘した。次に、ひとり旅は「おひとりさま」という概念の1つで捉えることができるため、「おひとりさま」とひとり旅の現状を整理した。また、旅行中や宿泊施設でのセキュリティなどの現状や対策についても整理した。その後、20代前半の女性126名を対象にアンケート調査を実施した。その結果、ひとり旅をしたいという女性は多く、家族や親しい友人と連絡をとることやスマートフォンを利用した対策を重視していることが確認できた。このことから、女性のひとり旅における防犯対策として、一時的にでも位置情報アプリや防犯対策アプリを活用するほか、こうした情報を広めることによって、ひとり旅を安心して楽しめる女性が増加すると考えた。
環境への関心を環境配慮行動につなげるための取り組み-日本人の行動規範に基づいて(No.130)
国際観光学部4年 髙堀寛子
地球温暖化のさらなる進行を防ぐために、持続可能な社会の実現は必要である。しかし、筆者は大学での授業をきっかけに日本人の持続可能性への意識が低いことを知った。そこで、日本人の環境に対する関心や行動はどの程度なのか疑問を抱いた。本研究では、環境に配慮した行動を促すために日本で取り組んでいくべきことを明らかにすることを目的とした。現状では、日本人の環境問題に対する関心や意欲、実際に行われている環境配慮行動を明らかにした。その結果、日本国内だけで見ると、環境に対する意識・関心、行動意欲は必ずしも低くはなかったが、世界に比べると、日本人の気候変動に対する関心は低くはない一方で、環境配慮行動に対する意欲は低く、気候変動に対する関心が意欲や行動に結びついてないことが明らかになった。そこで、これらの原因を探るため、環境配慮行動を行わない理由を調査し、環境配慮行動を促すための課題を整理した。その上で、関心を行動につなげるために、学校教育の改善や日本人の行動規則に基づいた提案が必要であることを指摘した。
「多様性」が原因で起こる恋愛・結婚離れの改善に関する研究(No.131)
国際観光学部4年 吉川栞
本研究は、「多様性」によって影響を受けたと考えられる一般的な異性同士の恋愛の取り組み方を提案することを目的とした。はじめに先行研究を整理し、既存の研究には恋愛に対するイメージやアイデンティティが原因となって恋愛離れが起きているとする研究は見られるが、「多様性」と一般的な異性同士の恋愛に関する研究は見られなかった。もともと日本では「お見合い結婚」が主流であったが、その後「恋愛結婚」が主流となった。さらに多様化が進むと、恋愛や結婚をすること自体が自由となり、現在では様々なライフプランが生まれ、自身の好きなように生きるというように、時代とともに考え方も変化している。その中で、「多様性」の容認はこれまでの一般的な異性同士の恋愛をしたい人に影響を与えていることが明らかになった。そこで、どのような影響があったのか、また「恋愛よりも趣味を優先したい」という人が多いことから、具体的な趣味をアンケート調査した。加えて、恋愛に対しての考え方を他国と比較するために文献調査を行った。これらの調査結果を分析し、定期的な交流の場を設け、消極的な人が異性とかかわるアドバイスを受けることができる機会をつくること、マッチングアプリで共通の趣味を通して新しい出会いの場を提案すること、恋愛に対しての積極性を高めることを提案した。