4年間の学びの集大成となる卒業研究の成果を発表しました

 1月26日(火)、森重ゼミ2~4年生36名が参加し、第8回森重ゼミ・卒業研究発表会を開催しました。今年度は新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、前期授業はほとんどオンライン開催となったうえ、研究のための調査も思うように進まず、ゼミ生も指導する側も苦労の連続でした。それでも何とか20,000字以上の卒業論文を完成させました。今回発表した8期生で、森重ゼミでの卒業研究の提出者は累計100名を超えました。
 当日は大阪府に2度目の緊急事態宣言が発出中で、例年通り対面で開催するか、オンライン開催に切り替えるか、ずいぶん悩みました。しかし、4年生にとって4年間の集大成を後輩の前で直接伝えることは、今後社会で活躍する上で大きな自信につながります。2~3年生にとっても、自身の研究をイメージする上で意義深い機会になります。それに、今年度は学年を超えた交流の機会をほとんど持てなかったことも考え、大学のルールに則って、徹底した感染防止対策を施した上で、対面にて開催することにしました。
 当日は4年生14名の卒業研究発表に続き、3年生もゼミ活動の成果を発表しました。3年生も当初予定していた高知県大月町での現地調査ができなくなりました。全員で何か形に残るものをつくりたいということで、方針を変更し、大学での成長のきっかけを伝えるPR動画制作の活動を行ってきました。それぞれがコロナ禍を乗り越えながら、何とかゴールをめざし、辿り着きました。対面の効果もあり、今までにない活発な質疑応答が見られた研究発表会となりました。
 以下では、卒業研究を提出したゼミ生の研究テーマおよび要旨を紹介します。(森重昌之)

当日の様子

  • 開会挨拶の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 卒業研究発表の様子

  • 3年生のゼミ研究成果発表の様子

  • 質疑応答の様子

  • 質疑応答の様子

  • 質疑応答の様子

※関連記事

卒業研究のテーマおよび要旨

JFLに所属するチームの観客数増加に向けた提案-松江シティFCを事例に(No.95)
 国際観光学部4年 袖本惇平

 近年、海外でプレーしていた一流選手がJリーグに移籍している。その影響で、Jリーグに対する注目度が上がっている。本研究では、JFLに所属している松江シティFCがJリーグ参入するためには平均観客数が2,000人以上であることが条件とされているため、島根県の隣にある鳥取県のサッカーチーム「ガイナーレ鳥取」を事例に、観客数を増やすための要因を明らかにすることを目的とした。まず、島根県と人口や地形なども似ている鳥取県にあるガイナーレ鳥取や同じ島根県にあるプロバスケットチーム「スサノオマジック」が観客を集める際に、どのような取り組みを行っているのか調査した。その中で、観客数が増える要因は、サッカー好きの観客を増やす取り組みと、サッカー好き以外の観客を増やすための取り組みの2つに分けることができると分析した。そして、その2つの取り組みを松江シティに当てはめて考察した。その結果、会員限定特典や利便性の向上、ファンとの交流活動、イベントの価値を高める取り組みを行うことが必要であると提案した。

地域イメージの転換による観光文化都市としての発展の可能性-佐賀県の有田焼を例として(No.96)
 国際観光学部4年 鐘雪蓉

 本研究では、佐賀県の観光産業および有田焼の現状を調査し、有田焼に関する観光資源が十分に開発され、活用されていないという課題を見出した。そして、有田焼に関する多くの文化観光資源を理解・活用し、佐賀県を文化観光都市へ発展させ、地域の観光産業の活性化を促進することを目的とし、SWOT分析の方法で現在の文化観光都市としての発展の優位性や劣勢、チャンス、リスクを分析した。その上で、佐賀県の課題を解決するために、中国の景徳鎮の事例を研究し、イメージの転換がポイントであることを明らかにした。これらの調査結果を用いて、有田町における観光ルートの開発や有田焼を中心とする文化創造地区テーマパークの建設、焼き物の文化創造を活かしたイベントの実施など、文化創造の視点から佐賀県の文化観光都市としての発展に向けた提言を行った。

山村地域における観光の現状と課題-高知県嶺北地域を事例に(No.97)
 国際観光学部4年 黒原陸

 高知県嶺北地域は、大豊町、本山町、土佐町、大川村の4町村から成り、吉野川源流域にある地域として、歴史や観光も吉野川を中心として発展してきた。周囲を標高200~1,700mの山々に囲まれ、吉野川や早明浦ダムなど水資源が豊富なことから、ラフティングや登山などのアウトドアを中心とした観光に取り組んできた。地域外からの交通利便性もよく、魅力ある地域に見えるが、高知県の調査では周辺の山村地域や高知市などよりも来訪者数が少ない傾向が続いていた。そこで、同じ山村地域で「ゆず」を活用して観光化に取り組んだ高知県馬路村の事例をもとに、その成功要因を調査した。その結果、馬路村では村民の生活に古くから馴染みのある「ゆず」だけでなく、多くの歴史を刻んできた「魚梁瀬杉」を含めた資源のブランディングを行い、各資源の単体での売り込みではなく、村そのものを売り込んだことを明らかにした。この結果をもとに、嶺北地域に存在する山や水を生かした観光資源を、町村ごとに売り出すのではなく、それぞれの資源を組み合わせ、アウトドアの町「嶺北」という1つのブランドで、地域そのものを売り出す戦略をとることが必要であるという結論に至った。

Jリーグの観客動員の維持における課題-世界のトップリーグと比較して(No.98)
 国際観光学部4年 中田悠介

 本研究では、Jリーグの観客動員の構造に着目し、リピーターの増加と若年層サポーターの獲得による観戦者の高齢化を防ぐことを目的とした。Jリーグの概要やこれまで行ってきた観戦者増加の戦略、観客動員数の変遷から、リピーターの少なさ、観戦者の高齢化など、Jリーグ特有の課題が抽出された。そこで、世界各国のトップチームが行ってきたSNSを活用したリピーター増加、若年層サポーターの獲得の戦略をJリーグに当てはめて分析を行った。その結果、選手のピッチ上では見られない普段の姿などをSNSで投稿することで、リピーターの増加が期待できる。また、比較的若年層が多く利用するTwitterやInstagramで情報を拡散することで、高齢化を防ぐことができると考えられる。このことから、Jリーグがこれらの課題を解決するだけでなく、これから先の時代を見据えた上でも、SNSは必要不可欠であるという結論に至った。

「方言を守る」とはどういうことか-沖縄のしまくとぅばを事例に(No.99)
 国際観光学部4年 平安座レナ

 近年、沖縄では若者の方言離れが問題視されている。沖縄県では、「しまくとぅば」の普及・継承を図ることを目的にさまざまな取り組みが行われている。しかし、グローバル化が進む中、多くの若者は大学進学や就職などで生まれ育った地域とは別の地域で生活する人も少なくない。このような状況が当たり前の現在、若者の方言離れは避けられない問題である。そこで、文化の1つであるしまくとぅばを消滅させるのではなく、次世代へ継承し、守ろうと行っている沖縄県の取り組みや、他の県が方言を守るために行っている取り組みについて調査した。その結果、本研究では言語が変化することを前提に考え、方言の意味を少しだけでも理解できたり、挨拶程度でも方言を使用する人が増えたりすれば、各地域で話されている方言が守られていると考えてよいと判断した。さらに、本研究では「方言のアクセサリー化」や「方言コスプレ」を利用して守られている方言も、「方言を守る」という視点から考えた時に一定の意義を持つと考えた。

フィットネス競技による地域活性化および健康促進の可能性(No.100)
 国際観光学部4年 米田善洋

 近年、高齢化社会に伴い国民の医療費が増加しており、健康に対する意識が高まっている。本論文は、フィットネス競技というまだ聞きなれないスポーツで地域活性化ができるのか、またそれが「健康」という社会的問題の解決につながるのかを明らかにすることを目的とした。研究を進めている中で、フィットネス競技がスポーツイベントとして成立すれば地域活性化の可能性があることと、スポーツイベントへの参加が当事者の運動習慣を向上させ、それが健康づくりに役立っていることが明らかになった。そこで、スポーツイベントの成功事例の調査を行ったほか、フィットネス競技の参加者および観戦者に参加・観戦目的、未経験者にフィットネス競技のイメージ、また両者に運動頻度に関するアンケート調査を行った。調査結果の分析・考察から、フィットネス競技はスポーツイベントとして地域活性化の可能性があること、参加者および観戦者の運動頻度が多いことから健康促進に貢献することを明らかにした。

観光の観点から見たインフルエンサーの可能性-YouTuberを事例に(No.101)
 国際観光学部4年 西岡翼

 本研究では、インフルエンサーを利用した観光が発展している現在、継続的に観光客を増やすにはどのような条件が必要か明らかにすることを目的とした。そこで、愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組YouTuber東海オンエアを事例に取り上げた。まずコンテンツツーリズムとSNSの内容について調査し、現在YouTuberがもたらす影響力を考えた。しかし、なぜインフルエンサーを利用した観光が発展するのであろうか。本研究では岡崎市に訪れている観光客と岡崎市役所に聞き取り調査を行った。聞き取り調査の結果、「会えるかもしれない」という可能性をつくり出すことと店自体の魅力が必要なこと、岡崎市と協力することの3つの条件があげられた。今後もSNSの需要は上がっていくことから、YouTuberの影響力は増していくと考えられる。このことから、3つの条件を備えたインフルエンサーを目的に行う観光はこれからも継続的に観光客を増やす可能性があるという結論に至った。

観光の担い手不足の解消に向けた移住者の確保の可能性-徳島県三好市を事例に(No.102)
 国際観光学部4年 松下綾里

 本研究は、徳島県三好市が今後少子高齢化によって予測される観光の担い手不足を解消するため、どのような取り組みが必要か検討することを目的とした。三好市の観光客の特徴として、外国人観光客が増加傾向にあり、山間部の自然を満喫するために訪れる観光客が多い。現在、三好市は住民が主体的に観光に取り組んでいるが、過疎化が進むことで観光の担い手が減少し、継続が難しいという課題がある。そこで、三好市と類似した条件を持つ神山町を事例に取り上げた。調査の結果、神山町では「働き方の自由」と「移住者が可能性を広げる環境がある」という要因によって若者の移住者が集まっていることを明らかにした。このことから、三好市においても2つの要因を適用して若者の移住者を増やし、地域住民との交流を通して観光の担い手となる人材を地域で育成することで、観光の担い手不足を改善できるのではないかと考えた。

SNSを活用した観光資源の認知度向上の可能性-大阪府泉南市を事例に(No.103)
 国際観光学部4年 八野駿太

 本研究は、泉南市のイベント(ミュージックサーカス)を国内観光客に向けて発信することで、イベントの来訪者に泉南市の魅力を伝え、観光客増加の可能性を検討することを目的とした。現在の泉南市の観光資源は認知度が低く、SNSを活用したイベントの投稿や情報はほとんど見られない。そこで、本研究ではSNSの活用不足を課題と考え、SNSをうまく利用した日本最大級の音楽フェスであるULTRA JAPANの調査を行った。そして、SNSの使い分けのメリットや個性のある魅力を明らかにした上で、ULTRA JAPANの分析結果をもとに、泉南市のイベントに多くの来場者が訪れる方策を考察した。その結果、ミュージックサーカスのホームページやチケットなどに泉南市の観光資源の情報を掲載することで、イベントだけではなく、泉南市の魅力を認知してもらい、後日泉南市に興味を持った観光客が訪れる可能性があると考えた。

女性市場の成長とお一人様の関係性(No.104)
 国際観光学部4年 大川千琴

 女性の一人飲みを頻繁に見かけるようになった近年、なぜ「お一人様」と呼ばれる一人飲みは増加しているのか。一人飲みが増加している要因や、昔と現在ではどのような考え方の違いがあるのかを目的に研究を行った。そこで、一人飲みをする女性はどのくらい増えているのか現状調査を行った。そして、一人で来店された女性を対象に行った聞き取り調査の結果から、一人飲みを行う女性は独身が多いことが明らかになり、独身女性の増加の要因や一人飲みとの関係性を調査し、昔と現在では女性に対するイメージが変わってきていることがわかった。また、これまで男性市場と言われていたところに女性が参入し、女性の社会進出が目立っていることも明らかとなった。このことから、働く女性が増えるにつれて「お一人様」も増えていることが明らかになり、一人の時間を有意義に過ごす女性が増加しているという結論に至った。

インバウンドウェディングによる日本のブライダル市場の活性化の可能性(No.105)
 国際観光学部4年 稲田加菜実

 本研究は、少子化や晩婚化による入籍数減少、価値観の変化から生まれたナシ婚や海外挙式の増加によって低迷している日本のブライダル市場を、インバウンドウェディングによって活性化できるのかを目的に研究を行った。調査方法は、大きく3種類に分けられるインバウンドウェディングを、それぞれ4つの項目によって文献調査を行った。その結果、海外挙式やナシ婚の数がインバウンドウェディングの数に比べかなり多く、インバウンドウェディングが日本のブライダル市場の減少分を補うだけの効果をもたらしているかどうか、現段階では判断できないということが明らかとなった。しかし、インバウンドウェディングは挙式の日取りに左右されないほか、新婚旅行を兼ねて行うことから1人当たりの消費額が多い。これらのことから日本のブライダル市場だけではなく、地域の活性化や観光市場の経済効果も期待ができ、日本にとって重要な役割であることも明らかにした。

コロナ禍で生まれた観光の効果的な活用方法(No.106)
 国際観光学部4年 岡大地

 本研究は、コロナ禍で注目を浴びたスマートツーリズムとマイクロツーリズム、観光復興政策がどのようなものであり、より効果的に活用するための方策を明らかにすることを目的とした。そこで、それぞれの現状やコロナ禍で生まれた観光形態、観光政策が本当に効果を発揮しているのかを課題と考え、旅行者の意識の変化や政府レベル、民間レベルでの観光復興対応の方法とその効果を調査した。考察では、それぞれのメリット・デメリットを分析した結果、マイクロツーリズムはターゲット層を広げ、地域に根差すことで、アフターコロナにも対応が可能であると考えた。また、スマートツーリズムはこれからの発展に期待できる一方、その中でもオンラインツアーは次の旅行者に向けた「事前準備」という使い方が望ましいと結輪づけた。さらに政府の観光復興政策は金銭面によるケアだけではなく、より安全性をPRすることが必要であると考えた。また、政府の観光復興政策が既存の観光需要を回復させようとしているのに対し、マイクロツーリズムやスマートツーリズムの登場は既存の観光の定義の中にある「日常圏外」というものに当てはまってないことから、コロナ禍で観光の定義が変化してきているのではないかと考えた。

Jリーグがアウェイツーリズムを通じてめざす姿(No.107)
 国際観光学部4年 田路和耀

 Jリーグには「アウェイツーリズム」という言葉があり、試合だけではなく、観光にも力を入れている。本研究では、他のスポーツでも他のチームのホームゲームを観戦する人びとがいるにもかかわらず、なぜJリーグのみアウェイツーリズムと呼んでいるのか明らかにすることを目的とした。そこで、Jリーグや他のスポーツの現状を調査し、他のスポーツと比べ、Jリーグではサポーターにどのようなメリットがあるかという課題を見出した。課題を解決するために、浦和レッズやガイナーレ鳥取の事例調査を行ったほか、ラグビーやマラソン大会、オリンピックなどの他のスポーツとの比較を行った。その結果、Jリーグはチーム数が他のスポーツに比べて多いため、サポーターが多くの都道府県に行けるという特徴があり、アウェイの地域で観戦だけではなく、観光を楽しむ可能性があることを指摘した。

大塚国際美術館を事例とした新しい美術館の価値(No.108)
 国際観光学部4年 福田英司

 本研究では、まず美術館の歴史から美術館の役割を調べた。一般的な美術館は歴史的価値が高い美術品や、画家や作家が創った美術品など、本物を展示している。そして、美術品をじっくりと鑑賞できるように、展示方法も計算されている。しかし大塚国際美術館では、本物は展示されておらず、偽物であるレプリカだけが展示されている。レプリカだけにもかかわらず、来場者数が日本一になった美術館である。そこで、大塚国際美術館が提供しようとしているものは何かを見つけ出そうと調べた結果、大塚国際美術館は見る人誰にでも楽しめる空間づくりをしていることがわかった。この誰でも楽しめる形は単なる観光施設ではなく、芸術に対する教育にも影響があり、これらは美術館としての新たな価値となっていた。