1.就職活動が嫌なあなたへ

 多くの大学生の皆さんは、3年生に進級したあたりから就活について考え始めるでしょうか。就職活動を行う多くの人が、いわゆる大手企業や有名な企業、知っているところを中心に会社を選ぶかと思います。しかし、卒業した後の数十年間、あるいは、将来の目標としての数年間働く場所としての企業選びは、より具体的な計画や、自分の人生の目的に沿った内容であるべきです。
こうした中、2019年の4月1日より、『働き方改革法案』が順次施行されていきます。時間外労働の是正や、雇用形態間に存在する格差の是正が主な目的とされ、多数の企業による環境変化への対応が求められています。いうなれば、あくどい企業を無くして、個人個人の生活のスタイルに合わせた労働環境の提供当たり前にし、幅広い会社への就職を盛り上げようとする方針です。
このように、働く場所、働き方の選択肢がより広がる世の中において、皆さんが日本で就職する際に忘れがちな存在として、個人事業主中小企業があります。2016年の『経済センサス基礎調査』によれば、日本に存在する約560万の事業所(働く場所)のうち、いわゆる会社(法人)は約330万社存在し、半分程度の約210万人は個人事業主とされています。単純に考えても、今現在も200万人くらいの人は自分で仕事を生み出し、働いているといえます。また、従業員が100人以下の事業所数は日本全体のうち約450万もあり、個人事業主の分を差し引いても約240万社、皆さんが雇用されて働くほとんどの場所は、いわゆる知られていない中小企業であるといえます。
(中小機構ホームページより引用。画像については企業数ベースでのデータ。)

2.個人で働くことのメリット・デメリット

 個人事業主とは、そっくりそのまま個人で事業を行っている人、あるいはその事業体のことを指します。飲食店など、家族が一緒になって働いているケースを想像するとわかりやすいでしょう。これら個人事業は、法人としての登録がされていない場合を指しており、実はその規模や大きさは関係ありません。そして、法人登録がなされていないからこそ、税や保険の計算の仕方、支払い方、手続きの違いが存在します。一般的には、同じ額の年収であった場合、個人事業主の方が税額は法人より安いものの、将来の年金金額が少なくなります。
 また、個人事業主には言うまでもな定年退職はありません。あくまで自分がやりたいと思った時に始め、辞めたいと思った時に仕事を辞めることができるというのが、ある種のメリットといえるでしょう。一方で、会社法人とは違い自身の努力によって売り上げや儲けが生まれるので、給与の安定性は低いといえます。チャンスは大きいものの、リスクもそれなりにあるというのが個人事業主の在り方です。

3.時代が変わったから考えるべき選択肢

ところで、今現在の日本において、個人で事業を始めるのはかつてよりも容易になったといえます。なぜならば、情報化社会、技術の進展に伴い、事業に利用する物品(例えばレジスターもアイパッドで代用できます)が容易に手に入るようになりました。固定電話を引かなくても、携帯で仕事の受注も可能です。加えて、今まではなかった仕事が増えたという点も、個人事業を始めるいい機会といえるのではないでしょうか。資格が必要なものも少なくはないですが、例えばネット記事のライターや、個人で行う輸入雑貨商など、これまで考えられなかった仕事が生まれ、許容される時代となってきています。
実際に経済産業省の作成したフリーランス・個人事業についての資料、『労働市場の構造変化と課題について』でも、業種によってはフリーランス、あるいは個人事業主へ依頼を発注することが増えています。企業同士が取引をする時代から、企業と個人、果ては個人と個人が取引をする時代に変化してきました。これは、ストレートに、自分の力で働くことを選ぶチャンスの時期といえるのではないでしょうか。

これまでの個人事業=特殊なスキル(職人)や、飲食店など

(画像は左から、NPO法人いわて芸術文化技術共育研究所、マイナビ独立、より引用)

新しく増えてきた個人事業=今までなかった仕事、今まで会社がやっていた仕事

4.働きたいように働くために

 今回お伝えしたように、企業は皆さんの想像以上に存在し、そのほとんどが知られていない状態です。また、時代が変化してきたことで、個人の力で働くという選択肢は、必ずしも悪いものではなくなってきています。せっかくの機会ですので、これを機に、自分の将来を真剣に考え、今まで思いもしなかった選択肢をとってみてはいかがでしょうか。

身近な経営情報あらかると

 本連載では、われわれ阪南大学経営情報学部の教員が日頃の研究成果をもとに、みなさんの暮らしに役立つちょっとした知識を提供していきたいと考えています。研究分野はさまざまですが、いずれの場合も社会に役立つことを最終目標としています。難しい理論はとりあえず脇に置いて、身近な視点から経営情報学部に興味を持ってもらえれば幸いです。

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