第2次安倍政権が発足して以来、2019年12月で7年になります。2019年11月20日には第1次政権と合わせると在任期間が2887日となり、桂太郎内閣を抜いて歴代1位の在任期間となりました。第2次安部政権の目玉政策といえば、最近耳にすることが少し減ってきた感はありますが、アベノミクスという名の経済政策でしょう。多くの反論も存在しますが、政権自身はしばしばこの長期政権を大きく支えてきたのがアベノミクスであると言っています。
アベノミクスの中で政権が重要視してきたのが成長戦略なるものです。そして、成長戦略では労働生産性の向上が最重要の課題とされています。政権発足後以降、成長戦略及び労働生産性の向上について毎年のように言及がなされてきました。2019年6月21日に日本経済再生本部(本部長:安倍晋三内閣総理大臣)が公表した「成長戦略実行計画」におきましては、「第4次産業革命に合わせて組織と人の変革を進められるかどうかが、労働生産性上昇の実現を左右する」としています。労働生産性の向上を成長戦略のゴールとして考えていることがうかがえますね。
労働生産性とは働く人がどれだけの付加価値を生み出したかを示す指標です。労働生産性の測定方法には主に2つあります。付加価値を就業者数で割り算する方法と、付加価値を労働時間で割り算する方法です。また、付加価値の測定には古くからいくつもの議論があり、様々な測定方法があります。純付加価値にすべきなのか粗付加価値にすべきなのか、役員給与・賞与は付加価値に含めるべきなのかどうか等々。このあたりの議論はここでは割愛したいと思います。とにもかくにも、労働生産性とは働く人がどれだけ効率的に価値を生み出したかを示すものなのです。そして、この労働生産性の向上が現政権の最大の目標の一つなのです。
それでは日本の労働生産性は高いのでしょうか。日本の労働生産性を国際的に見てみると、それは決して高いものであるとはいえません。また、アベノミクスがスタートしてから成長戦略の目標としていた労働生産性の向上も、残念ながら、実現できているとはいえません。下記の図表はOECDに加盟する36か国の労働生産性を示したものです(日本生産性本部、「労働生産性の国際比較2018」)。日本の就業者一人当たり付加価値で見た労働生産性は年間で84,027ドルとなっており、OECD加盟の36か国中21位となっています。また、2015-2017年にかけての日本の労働生産性伸び率は0.3%で、順位はなんと36か国中29位となっています(平均値は0.6%)。アベノミクス開始後も労働生産性は決して順調には増えてはいないのです。
アベノミクスの中で政権が重要視してきたのが成長戦略なるものです。そして、成長戦略では労働生産性の向上が最重要の課題とされています。政権発足後以降、成長戦略及び労働生産性の向上について毎年のように言及がなされてきました。2019年6月21日に日本経済再生本部(本部長:安倍晋三内閣総理大臣)が公表した「成長戦略実行計画」におきましては、「第4次産業革命に合わせて組織と人の変革を進められるかどうかが、労働生産性上昇の実現を左右する」としています。労働生産性の向上を成長戦略のゴールとして考えていることがうかがえますね。
労働生産性とは働く人がどれだけの付加価値を生み出したかを示す指標です。労働生産性の測定方法には主に2つあります。付加価値を就業者数で割り算する方法と、付加価値を労働時間で割り算する方法です。また、付加価値の測定には古くからいくつもの議論があり、様々な測定方法があります。純付加価値にすべきなのか粗付加価値にすべきなのか、役員給与・賞与は付加価値に含めるべきなのかどうか等々。このあたりの議論はここでは割愛したいと思います。とにもかくにも、労働生産性とは働く人がどれだけ効率的に価値を生み出したかを示すものなのです。そして、この労働生産性の向上が現政権の最大の目標の一つなのです。
それでは日本の労働生産性は高いのでしょうか。日本の労働生産性を国際的に見てみると、それは決して高いものであるとはいえません。また、アベノミクスがスタートしてから成長戦略の目標としていた労働生産性の向上も、残念ながら、実現できているとはいえません。下記の図表はOECDに加盟する36か国の労働生産性を示したものです(日本生産性本部、「労働生産性の国際比較2018」)。日本の就業者一人当たり付加価値で見た労働生産性は年間で84,027ドルとなっており、OECD加盟の36か国中21位となっています。また、2015-2017年にかけての日本の労働生産性伸び率は0.3%で、順位はなんと36か国中29位となっています(平均値は0.6%)。アベノミクス開始後も労働生産性は決して順調には増えてはいないのです。
それでは、なぜ日本の労働生産性は上昇しないのでしょうか?ここではどのような属性を持つ企業の労働生産性が低いのかを紹介してみたいと思います。
下記の図表は中小企業白書2016年版に掲載されていたものです。労働生産性が、企業の規模や産業、そして労働構成比に分けて示されています。日本の労働生産性が上昇しない原因がどこにあるのかが一目瞭然ですね。日本の雇用の約70%を担っている中小企業の労働生産性がとても低いのです。特にサービス業の低さはかなりのものです。
下記の図表は中小企業白書2016年版に掲載されていたものです。労働生産性が、企業の規模や産業、そして労働構成比に分けて示されています。日本の労働生産性が上昇しない原因がどこにあるのかが一目瞭然ですね。日本の雇用の約70%を担っている中小企業の労働生産性がとても低いのです。特にサービス業の低さはかなりのものです。
筆者は2018年から大阪府内のとある都市の中小企業活性化プロジェクトに参加しています。その都市の労働生産性の推移、あるいは事業所数、従業者数等を統計データから分析してみたのですが、判明した3つの事実があります。一つ目は、上記の図表と同じく、事業規模が小さいほど労働生産性が低いということでした。二つ目は、中小事業所、特に小規模事業所の数は年々減少してきているということでした(バブル崩壊以降が特に顕著)。三つ目はその都市全体の労働生産性は、意外なことに、年々高まってきているということでした。これはおそらく労働生産性の低い中小企業が減少することによって労働生産性の向上を実現してきたということなのでしょうね。中小企業活性化プロジェクトであるにもにもかかわらず、皮肉なことです。
ここまで見てきたことが意味するのは、日本が今後ともに経済的な繁栄を維持するためには、あるいは経済的な衰退を回避するには、中小企業の労働生産性問題に真正面から取り組まなければならないということでしょう。もちろん、労働生産性の高い元気な中小企業が存在することも事実です。しかし、上記の図表が示すように、中小企業の労働生産性は総じて低いのです。「中小企業は日本の宝だ!」、よく耳にする言葉です。今後は「労働生産性の高い中小企業が日本の宝だ!」に変えなければならないですね。日本の労働生産性を向上させるには、「下町ロケット」に代表されるような中小企業信仰と、まずは、決別する必要があるのかもしれません。
ここまで見てきたことが意味するのは、日本が今後ともに経済的な繁栄を維持するためには、あるいは経済的な衰退を回避するには、中小企業の労働生産性問題に真正面から取り組まなければならないということでしょう。もちろん、労働生産性の高い元気な中小企業が存在することも事実です。しかし、上記の図表が示すように、中小企業の労働生産性は総じて低いのです。「中小企業は日本の宝だ!」、よく耳にする言葉です。今後は「労働生産性の高い中小企業が日本の宝だ!」に変えなければならないですね。日本の労働生産性を向上させるには、「下町ロケット」に代表されるような中小企業信仰と、まずは、決別する必要があるのかもしれません。
身近な経営情報あらかると
本連載では、われわれ阪南大学経営情報学部の教員が日頃の研究成果をもとに、みなさんの暮らしに役立つちょっとした知識を提供していきたいと考えています。研究分野はさまざまですが、いずれの場合も社会に役立つことを最終目標としています。難しい理論はとりあえず脇に置いて、身近な視点から経営情報学部に興味を持ってもらえれば幸いです。
連載講座 「身近な経営情報あらかると」 過去記事はこちら
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- 第2回「美しい消費、フェアトレード」
- 第3回「もうひとつの働き方改革~高齢化社会と人手不足の中で~」
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